No.620 独占が生む捏造報道 ~ 新聞業界の病理

 新聞業界の独占構造が捏造報道の温床となっている。

(原題 「捏造と独占 ~ 新聞業界の病理」)


■1.反省しない餃子メーカー■

 東アジアのとある経済大国。同国では自由市場のもと、自動車、家電、食品などの各分野で激烈な競争が展開され、そこで磨かれた各社の製品は海外でも高く評価されていた。しかし唯一、取り残された業界があった。餃子(ギョーザ)業界である。

 そこではアサヒ餃子、マイニチ餃子など数社が全国的なメーカーとして、君臨していた。

 マイニチ餃子は、かつて毒入り餃子を出荷して、中毒患者まで出したのだが、消費者団体が非難の声をあげても、「原因は製造工程には見つからなかった」などと素知らぬ顔で通した。不買運動も起きたが、それをものともせず営業を続けている。

 アサヒ餃子も、中国産餃子を国産と偽ったり、売れ残りを再加工したりと、不祥事が何度も発覚して世論の非難を浴びていたが、一向に聞く耳を持たない。

 他の業界なら、こういう悪徳業者は売上を失って倒産するか、官庁の取り締まりで営業停止処分になるはずなのだが、なぜかしぶとく営業を続けている。先進国での市場ではあるまじき現象なのだが、どうしてこんな悪徳業者が許されるのか。その秘密は業界構造そのものにあった。


■2.なぜ不祥事を起こしても売上が落ち込まないのか?■

 まず毒入りとか、売れ残り再加工、中国産偽装などという不祥事を起こしたメーカーの餃子を、なぜ消費者が買い続けるのかという疑問である。

 第一に、こうした不祥事が起こって、監督省庁や消費者団体が非難しても、主要な新聞やテレビがあまり報道しないので、多くの消費者はその事実を知らなかった。これらのマスコミは他の食品だと鬼の首をとったように、業者を糾弾するのだが、なぜか餃子メーカーに関しては、控えめな報道しかしないのである。

 第二に、たとえ消費者が問題を知っても、容易には他社製品に替えにくい仕掛けがあった。宅配である。アサヒ餃子やマイニチ餃子は、毎日、餃子を各家庭まで届けてくれるので、その宅配サービスを利用する消費者がほとんどだった。

 たとえばアサヒ餃子の不祥事を知った消費者が他社製に替えようとすると、いちいちアサヒの販売店に購入停止を申し入れ、また他のメーカーに注文して、銀行口座の引き落とし手続きをするなど、手間がかかる。不祥事があったとしても、そんな面倒をかけてまで他メーカーに変える、という几帳面な消費者は少ない。

 第三に、監督省庁の方でも営業停止処分にするなど、十分な規制をするための法的整備が遅れていた。毒入りや売れ残り再加工など不祥事が起こる度に、餃子メーカーに厳重な注意をしても、罰則規定がないので、行政処分ができないのだった。

 こういう二重、三重の仕掛けにより、餃子メーカーは不祥事を起こしても、営業停止処分となったり、消費者から見放されたりしないので、売上はそれほど落ちず、そのために十分な反省をする事もなく、同様な不祥事を繰り返していたのだった。

 また、不祥事を起こした社内の責任者も、経営的に大きなダメージを与えていないので責任を問われず、逆に豪腕ぶりを買われて幹部に出世する社員もいた。こうした有様を見ていれば、一般社員も不祥事に対して、鈍感になっていくのは当然であった。こうして不祥事を起こす社員が再生産されていく。


■3.専門販売店網で新規参入防止■

 しかし、不祥事を続ける餃子メーカーに対して、品質と値段で優れた新規業者が参入してくれば、悪徳業者は駆逐されるはずである。これが自由市場の長所なのだが、こと餃子業界においては、新規参入を防ぐ障壁があった。

 アサヒ餃子やマイニチ餃子は、それぞれの系列の専門販売店網を全国に展開していた。アサヒ餃子系列の販売店は、アサヒ餃子のみを取り扱える。新規参入業者が、自社の餃子を売ろうと思っても、アサヒ餃子の専門販売店は取り扱ってくれないのだ。しかし、自前で販売店網を整備しようとすれば、膨大な資金がいる。

 販売店網を持たない餃子メーカーは、各種メーカーの餃子を扱ってくれるスーパーで勝負するしかない。ここでは売れる商品のみがスペースを確保できる本当の自由競争がある。しかし、毎日のように餃子を食べる消費者にとっては、やはり宅配が便利なため、売上全体ではスーパー経由よりも専門販売店経由の方がはるかに多い。結局、餃子市場では新規参入企業は大きなシェアをとれないことになる。

 この専門販売店網こそ、アサヒ餃子やマイニチ餃子が新規参入を恐れることなく、現状にあぐらをかいていられる仕掛けなのであった。


■4.餃子メーカーどうしの競争防止策■

 アサヒ餃子やマイニチ餃子などの既存メーカーどうしの競争はないのだろうか。通常の業界なら、メーカーどうし、あるいは販売店どうしで激烈なシェア争いが起こり、悪徳業者が駆逐されるはずだ。

 しかし、ここでも競争を防ぐ巧妙な仕掛けがある。まずは販売店での勝手な安売りを禁ずる条項が、独占禁止法の中の「餃子特殊指定」として規定されている。

 一般のメーカーは、独占禁止法により、小売業者に特定の販売価格を押しつけることを禁じられている。これはメーカー側の定価押しつけによって、小売店どうしでの自由競争を阻害しないようにするためだ。しかし、どういうわけか、餃子業界だけは、例外として小売価格をメーカー側に強制することが認められている。

 そのため販売店が餃子の売り上げを伸ばそうとすれば、新規契約顧客に、洗剤やティッシュペーパーなどを配るという程度のことしかできない。そして、販売員が売り込みのために戸別訪問して、消費者に嫌がられている。

 販売店側の自由な競争を封じてしまえば、あとはメーカーどうしで無言の談合がなりたつ。価格は1円単位まで各社横並びになっており、価格面でも競争原理が働かないようになっている。


■5.販売店への押し込み■

 しかし、餃子業界の全体売上は右肩下がりなので、各社とも経営は苦しかった。そこで、各餃子メーカーは専門販売店に「押し込み」をかけている。これは販売店からの実際の注文以上に、製品を押しつけ、売上があがったように見せるという手段である。

 販売店が餃子を配達する際に、各種の折り込み広告も一緒に配られる。この広告料も、餃子メーカーにとって重要な収入源だった。広告収入は、餃子の販売数に比例する。餃子メーカーは各販売店の実売以上の餃子を押しつけて、販売数を水増しし、それだけ高い広告料金をとるのである。これは限りなく詐欺に近い手口である。

 実際には、余分に押しつけられた餃子は、販売店が自分で消費するか、食べきれない分は廃棄される。販売店の店員の中には、毎日毎日、マイニチ餃子ばかり食べさせられて、ノイローゼになった被害者も出てきたとの事である。

 こんな押しつけ販売が横行するのも、各販売店が特定の餃子メーカーの専売となっているからだ。アサヒ餃子の専売店は、アサヒ餃子から睨まれたら、他社製品を扱えないので、廃業するしかない。だから押し込み販売でも、いやいや協力するしかないのである。

 もし、各販売店が自由にいろいろな餃子メーカーのものを扱えるのなら、こんな無理を言ってくるメーカーとの取引は断ってしまえるはずだ。やはり、専売店網による宅配制度こそ、餃子メーカーの横暴を赦している仕組みなのである。


■6.押し寄せてきた自由競争の波■

 こうして、餃子業界は、専門販売店網とマスコミの報道自粛、それに独占禁止法「餃子特殊指定」の3本柱によって独占構造を維持し、その中で様々な不祥事を起こしながらも、一切反省することなく過ごしてきた。まるでガラパゴス諸島のイグアナのように、グルーバル化する外界とは切り離されて、我が世の春を謳歌してきたわけだる。

 そんな餃子業界にも、ようやく変革の波が押し寄せてきた。インターネットの普及である。いくつかの新しい餃子メーカーがインターネットで注文をとり、宅配便で納入するというシステムを採用し始めた。

 これなら専門販売店網を持たない新規業者も、自由に参入できる。また、インターネット上では価格の比較もすぐにされてしまうし、どこのメーカーの餃子がおいしいなどの口コミ情報も即座に伝わる。消費者の方も、こうした価格情報や口コミ情報をもとに、注文するメーカーを自在に変えるようになっていった。ようやく自由競争の波が、餃子業界にも押し寄せてきたのである。

 また、どういうわけか大手マスコミは餃子業界の不祥事を隠してきたのだが、インターネットの世界では、そうした情報もあっという間に伝えられるようになった。

 このような透明性の高い市場競争が広まると、毒餃子を売ったり、中国産を国産と偽ったりすれば、消費者がすぐに離れてしまい、売上面で甚大な被害を受ける。したがって、不祥事を起こしたら、その責任者が社内で追求されるようになる。その時こそ、餃子業界が自浄能力を持つことができる。


■7.朝日新聞と毎日新聞の捏造報道ぶり■

 以上は、経済評論家・三橋貴明氏によるマスコミの業界構造の分析[1]をもとに、寓話に仕立てたものである。食品業界の不祥事をマスコミは叩きに叩いたのだが、当の新聞業界自体の不祥事と置き換えてみれば、その異常な様が見えてくる。

 朝日新聞や毎日新聞が、捏造報道を繰り返しながら、決して謝罪をしない姿勢は異様である。その典型例として三橋氏が挙げているのが、毎日新聞のWaiWai変態報道事件である。

 これは同社の海外向け英語版ホームページ、MDN(Maninichi Daily News) において、信じられないような変態的な記事を発信していたという事件である[2]。たとえば、「多くの日本の母親は受験シーズンを迎えた息子に口で性処理をしている」などというような記事を全世界に向けて発信していたのだ。

 インターネットの世界で批判の嵐が起きたため、毎日新聞はおざなりな謝罪文を掲載し、MDNを閉鎖したのだが、きちんとした訂正記事を書くわけでもなく、その上、問題のサイトの担当役員は役員報酬0.1カ月分を返上した後、すぐに代表取締役に昇進している。餃子メーカーが毒入り餃子を出荷したのと同程度の重大な不祥事なのだが、食品業界なら、こんな対応はマスコミ自体が決して許さないだろう。

 朝日新聞も負けてはいない。本誌でも、その捏造報道ぶりは何度か紹介してきた。たとえば、「朝日の三ホンダ」と呼ばれる三人の記者がいた。[a,b]

 一人は日本軍が中国で「百人斬り競争」をしたとでっち上げた本多勝一。もう一人は、沖縄のサンゴ礁を自分で傷つけたうえで、環境破壊を戒める記事を書いた本田嘉郎。3人目が、安倍晋三議員などが、NHKの慰安婦番組に圧力をかけて改編させたとの虚偽報道を行った本田雅和。これだけ捏造報道が続いているのだから、朝日新聞社内に自浄能力がないことは明らかである。

 こういう捏造報道を続けていても、新聞社として平気でやっていけるのは、専門販売店による宅配や「新聞特殊指定」による価格統制などで、自由競争を排除している新聞業界の独占構造に問題があるからだと、三橋氏は指摘している。


■8.自由民主主義国家にふさわしいメディアとは■

 この独占構造を急速に打破しつつあるのが、インターネット・メディアである。

 第一にインターネットによって自由競争が持ち込まれることになった。巨大新聞社のホームページサイトも、個人のブログと同じ舞台で競争しなければならない。さらに欧米の有力新聞社のサイトも競争に加わる。

 第二にインターネットの双方向性がある。新聞というメディアは基本的に記者から読者へという一方向でしかない。捏造記事に対して読者が反論の投書をしても、編集者側で簡単に握りつぶすことができる。それに対して、インターネットではブログやメールマガジンによって、読者側の反論を大々的に広めることが可能である。

 インターネットへの批判として、そこに流れる情報が玉石混淆だという点がある。しかし、新聞も今までの捏造記事、誤報、虚報のオンパレードを見れば、玉石混淆である点で変わりない。

 問題は新聞が流した「ゴミ情報」は、その独占性、一方向性ゆえに、そのまま多数の読者に届けられる、という浄化プロセスの欠如なのである。それに対して、インターネットでは膨大なブログなどでの自由な相互批判を通じて、「ゴミ情報」をチェックする浄化能力を持ちうる。

 こうして見ると、統制価格と配給制度に守られた新聞の独占構造は、独裁国家にふさわしいメディアであり、インターネットこそ、自由民主主義国家にふさわしいメディアであることが分かる。中国政府がインターネットの規制・監視のために世界最大・最先端の統制システムを構築している理由がよく理解できる[3]。

 三橋氏は「日本が現在抱えている問題の多くは、マスメディアの報道姿勢に起因している」[1,p8]と指摘しているが、弊誌も同感である。少なくとも、マスメディアが問題の存在を隠してしまえば、国民は問題を問題として気がつくことができない。

 インターネット・メディアの健全な発展によって、現在の新聞業界の独占構造を打破し、正確な情報と多様な議論を生み出していくことが、我が国の自由民主主義国家として必要不可欠な基盤である。(文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(401) 北風と朝日
 ある朝日新聞記者が北朝鮮擁護のために でっちあげ記事を書いたという重大疑惑。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h17/jog401.html

b. JOG(432) 姉歯の設計、朝日の報道
 建築士の偽装設計と、新聞社の捏造報道とは、職業の使命への背任という点では同じはないか。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h18/jog432.html

c. JOG(439) 「天網恢々、疎にして漏らさず」
~ 中国のメディア・コントロール(下)
 中国政府は世界で最大かつ最先端のネット統制システムを構築した。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h18/jog439.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 三橋貴明『マスゴミ崩壊』★★、扶桑社、H21
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4594060439/japanontheg01-22%22
2. 毎日新聞問題の情報集積wiki
http://www8.atwiki.jp/mainichi-matome/

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

■建太郎さんより

 新聞をはじめとするマスコミの欺瞞性、偽善には日々辟易しております。

 新聞も商売ですから、購読収入と広告収入で成り立っている、すなわち広告主の意に沿わない記事は出さないのに、建前上、不偏不党で中立な立場を偽装しているところが、ズルいですよね。

 うちの新聞は、日本をこういう国にしたいのでこういう意図でこのスタンスで書いてます。

と正々堂々と書けばまだしも、国家の木鐸であり社会の公器であると装って国民をミスリードしようとするのですから本当に卑怯です。

 本日の記事を多くの方がお読みくださりメディア・リテラシーを身に付けた方が増えれば、自浄能力のないマス・メディアは遠くないうちに消滅するでしょう。

■ 編集長・伊勢雅臣より

 自浄能力のない企業に対しては、消費者側が浄化能力を持たなければなりません。

以上


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