No.669 「政治から教育を変えていく」日教組戦略

「私はこんなことをするために教員になったのではない」と、選挙活動を強制されている教員は思った。


■1.刑事罰を受けた日教組幹部が教頭に出世

 本・平成22(2010)年3月4日の参議院予算委員会。「ヤンキー先生」、こと義家弘行議員が質問に立った。鳩山首相を相手に、北海道教職員組合の違法な選挙活動について、勤務時間中に学校のFAXで連絡を取り合うなど、証拠をもとに追求した後、矛先を変えて、こう語った。

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 実は、これは今、北教組を集中的に取り上げましたが、日教組の運動というのは別に北海道だけに限ったことではありません。様々な地域でひずみを出していますが、例えば教職員の違法な政治献金といえば平成十八年の山梨県教職員組合の違法な献金事件、これが記憶に新しいところであります。輿石東候補を応援するために一億円を超えるカンパとして裏金をつくって、問題が表面化しました。

 これについても、今実は大変な状況が起こっているわけですけれども、この事件のときに略式起訴、政治資金規正法で略式起訴されて刑事罰を受け、更に教育委員会から停職三か月の懲戒処分を受けた組合の財務部長なんですけれども、昨年春、小学校の教頭先生になっているんですよ。これ、今受け止めて、川端文部科学大臣、どうお感じになりますか。
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 この指摘に、議場内は「おおっ」と、どよめいた。

 企業に例えれば、会社の金を非合法的に使った財務部長が刑事罰を受け、さらに停職3カ月の処分を受けた後で、役員に取り立てられたようなものである。どんな会社なのか容易に想像できよう。


■2.「車の速度違反で免許停止になったようなもの」

 これに対する川端文科相の答弁はこうだった。山教委に問い合わせたところ、「管理職登用については、懲罰を受けたことのみをもって除外しておらず、市町村教育委員会の推薦を受け、筆答試問検査と面接試問検査等を実施する中で管理能力、指導力、賞罰歴等を総合的に判断をし行っているとの回答でございました」と、他人事のように説明するのみで、文科相としての判断は述べない。

 本件について、当の山梨県教育委員会は、読売新聞にこんなコメントをしたと報じられている。[1,p126]

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(元山教組財政部長は)処罰歴があるが、その他の成績などを考慮して教頭試験に合格した。車の速度違反で免許停止になったようなもので、停職3カ月の懲戒処分も終えており、問題はない。
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 山教祖にとって、現職教員が強制カンパで1億円を超える裏金を作り、違法献金で刑事罰を受けたことは、「車の速度違反で免許停止になったようなもの」と言うのである。言い換えれば、この程度のことは山教組では、日常茶飯事という事か。


■3.選挙活動を一生懸命やれば出世できる

 選挙運動に貢献した組合幹部を出世させるという事は、山梨県では慣例として定着しているようだ。昭和63(1983)年から平成10(1998)年までに、山教組各支部の委員長、書記長、財務部長ら役員で、管理職の対象年齢に達した125人のうち113人、実に90%以上が、教頭、校長、さらには県教育委員会に登用されている。[1,p112]

 山梨県では、毎年5百~7百人の教員が教頭試験を受けているが、そのうち通るのは1割くらいだという[2,p126]。すなわち、一般教員が教頭になれる確率は1割くらいだが、組合幹部の9割方は学校の管理職になれるというのである。

 たしかにクラスルームで真面目に生徒の教育に打ち込んでいる教員よりも、他の教員を動員して、カンパを出させ、父兄に投票依頼の電話をさせ、ポスター貼りさせる、という事を経験してきた組合幹部の方が、管理職としての訓練を積んでいるとは言えるだろう。教師の役割が選挙運動ならば。

 山梨県のある県庁職員は、産経新聞記者の阿比留瑠比(あびる・るい)氏にこう語っている。[1,p77]

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何が山教組をこれまで持たせてきたか。それは、山教組の役員をやれば校長にはなれるからだ。出世のために一番手っ取り早い方法が、組合活動を熱心にやることになっている。そのかげで、教育熱心な教師は出世できず置いていかれる。まったくもって間違っている。・・・

 私も教育委員会に勤務したことがあるが、教委は教員人事は必ず山教組役員に見せ、了解をとっている。山教組の意思は100パーセント通る。どうしてかというと、歴代知事はほとんどみんな山教組の支援を受けて当選したきたからだ。
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 すなわち、山教組は次のような支配構造を確立しているようだ。

・選挙活動によって、県知事や参議院議員を当選させ、政治権力を握る。
・その政治権力によって、教員の人事権を握る。
・その人事権によって、忠実な組合幹部を出世させる。
・出世を餌に、組合活動に教員を駆り立てる。


■4.「私はこんなことをするために教員になったのではない」

 この支配構造の犠牲者は、教育に真面目に取り組もうとしている教員である。地元紙である山梨日日新聞には、次のような悲痛な投書が寄せられている。[1,p201]

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(輿石氏支援の)1万円カンパも、私の勤務校では強制的に行われています。もし拒否したのなら、他の組合員(教員)から白い目で見られてしまいます。またそのカンパのお金も使途不明です。

 選挙となれば県民の皆さん周知の通り、個票集めや電話戦術、ビラ配りなどを強いられます。「私はこんなことをするために教員になったのではない」と叫びたくなります。(北杜市・教員)
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(教員は)選挙があると自己の政治信条とは無関係に民主党(旧社会党)候補を応援することを強制される。具体的には1万円のカンパ、50人の個票集めなどである。もし、これを拒否すれば年度末の人事異動などで不利な目に遭うので組合には逆らえない。

 山教組出身者が県教委におり、山教組は彼らとともに人事権を握っている。これは県内の教職員であれば、誰でも知っている公然の秘密である。(大月市・読者)
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 驚いたことに、選挙資金集めは知事選や県議選のような地方選挙でも恒例行事で、選挙がない時期には、「カンパ」と称する使途不明の資金集めもあるらしい。40代のその知人(小学校教員)は、今までに数十万円もの選挙資金を拠出させられたと話している。

 私は子供の通う学校のPTA総会で、「保護者名簿」を選挙活動のために校外に持ち出すのはやめてほしいとお願いしたことがある。校長も、山教組の元幹部とのことでこの願いは無視された。(甲府市・大学講師)
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 隣家の教員に、「組織内で改革の声があがったり、見切りをつけて脱会する者がいないのか」と尋ねたが、末端の悲鳴は組合幹部には伝わらず、(山教組の)脱会希望者はノイローゼになるほどいじめ抜かれた上、管理職から「協調性がなく管理職に不向き」との烙印が押されるという答えが戻った。(南アルプス市・読者)
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 弊誌607号[a]では日教組を「教育界の『北朝鮮』」と形容して、その無法ぶり、人権弾圧ぶりを紹介したが、まさにその生々しい実態がこれらの投書に現れている。


■5.「選挙中にはわが子の学校は自習ばかり」

 同時に、選挙活動に奔走する教員たちの教え子も被害者である。こんな投書もある。[1, p203]
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 教師たちの授業軽視の姿勢には驚かされる。平日の昼間からゲームセンターやマンガ喫茶に小中学生があふれるのは、一日あるいは半日休校となる教師の組合活動の日だ。この県の教職員組合は教育より選挙に熱心で、選挙活動に疲れた教師が次々と休暇をとり、選挙中にはわが子の学校は自習ばかりである。
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 3人の子どもを連れ山梨に赴任して間もなく2年になる。学校教育に関してこんなに失望させられた任地は初めてである。・・・

 不慣れな土地で多くの知人をつくろうと、皆が敬遠するPTA役員も引き受けたが、山教組主催の集会に動員をかけられ知らぬ間に、ある民主党議員の「支持者」にさせられていた。他県の友人に「冗談だろう」と笑われるようなPTA活動も経験した。

 学校を休校にしての組合主催の活動が公認され、教育より選挙が大切という教師たちは「子どもたちの学力伸張にはには全く無関心」な様子である。(甲府市・会社員)
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 山教組の教育無視には、平成元(1988)年6月の甲府市議会で、加藤裕市議が次のように批判している。[1,p20]

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 教員の勤務中に輿石東氏が労組役員を同行して学校を周り、授業を中断させて、子供たちに自習をさせ、教員を職員室に集め、教頭、分会長(各学校毎に置かれている教組組織の責任者)に「選挙をがんばろう」と言わせること。候補者(輿石氏)自身もあいさつすること、在住者会という名目で選挙対策の会議を学校で行うということ。公共施設である職員室や校舎内に候補の選挙ポスターを掲示することなどです。

 特に授業を15分から20分も中断させて、教員を職員室に集めることについては、父兄から子供や教育を犠牲にするものとして強い怒りの声があがっています。
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■6.「日教組の皆様方とともにこの国を担う覚悟」

 平成21(2009)年1月14日、東京で開催された日教組「新春の集い」では、鳩山由紀夫・民主党幹事長(当時)が参加して、こんな挨拶を述べた。[1,p28]

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 改めて日教組さんの今日までのご活動に、敬意と感謝を申し上げながら、今年がそんな意味(政権交代)での大きな転機の年になりますように。

 中村(日教組中央)委員長からは予算を増やせ、という話もございましたが、そのことも当然のことながら、政府の皆さんと協力して、また政権をとりましたら、そのことを第一にお約束を申し上げながら、日教組の皆様方とともにこの国を担う覚悟の一端の表明とさせていただきます。
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予算増などの日教組の要求を聞くから、選挙協力を、という取引である。「日教組の皆様方とともにこの国を担う覚悟」という表現に、同志意識が端的に表れている。


■7.「政治から教育を変えていく」

 この大会で真打ちとして登壇した輿石参議院議員会長は、短い挨拶の中で、もっと明確に述べた。[1,p31]

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 政権交代にも手を貸す。教育の政治的中立などと言われても、そんなものはありえない[会場やや笑い]。政治から教育を変えていく。逆説的に。そんな勇気と自信を持っていただきたい。
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 日教組が民主党による政権交代に「手を貸す」。それによって「政治から教育を変えていく」。これが日教組が多くの一般教員に選挙運動を強制している狙いなのである。

 そして、政権をとったら、そのあとは「政治主導」で、文科省も有無を言わせず、従わせる。

 たとえば、冒頭で山教組の元財務部長が教育委員会から停職三か月の懲戒処分を受けた、と紹介したが、実は、これも当初の県教委の処分が甘すぎるとして、文科省の初等中等局長が見直しを指導した結果である。

 それが民主党が政権をとった途端に、教頭に出世させるという山教組の措置を、民主党出身の文科相はそのまま認めてしまう。心ある文科省官僚の思いは如何ばかりであろうか。これが「政治主導」の実態なのである。


■8.日教組の不法不正な支配を打破するためには

 こういう日教組の「政治から教育を変えていく」戦術が広がっていけば、山梨県教育界のごとき不法不正な状態が全国的に広がり、我が国の教育をさらに劣化していくだろう。

 これを防ぐには、どのような手があるか。幸いなことに、我が国は北朝鮮とは違って、民主国家であり、法治国家である。「いまだ」と付け加えるべきかも知れないが。

 民主国家の根本は、選挙で人物を選ぶことである。今夏の参院選で輿石議員は再選を果たしたが、その得票は18万7千票で、自民党新人の元高校教師・宮川典子さんに18万3千余票まで追い上げられ、その差はわずか4千票足らずだった。あと数千人の人が山教組の不法不正な行状を許せないと思えば、次回は輿石議員を落選に追い込むことができよう。

 もう一つは、法治国家という点である。この6月には北海道教職員組合による不法献金の疑いで起訴されている元委員長代理・長田秀樹被告が容疑を認めたことで、資金提供を受けた民主党の小林千代美衆院議員が議員辞職に追い込まれた。日教組の不法行為を見つけたら、一つ一つ告発していくことだ。

 良識ある国民一人一人が、民主主義と法治主義に則って批判の声をあげていくことが、日教組支配を打ち破る道である。
(文責:伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(607) 日教組、教育界の「北朝鮮」
 少数派が権力握って、一般教員の自由な志を踏みにじる構造は、かの国と同じである。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h21/jog607.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 阿比留瑠比『決定版 民主党と日教組』★★、産経新聞出版、H22
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4819111035/japanontheg01-22/


■「『政治から教育を変えていく』日教組戦略」に寄せられたおたより

■トラネコさんより

 いつも有益な情報を有難うございます。時々拙ブログにも紹介させていただいています。(http://ryotaroneko.ti-da.net/

 さて、北教祖の話が出ていましたが、自分は20年前北海道札幌市にて教員をやっていました。当時組織率は90%を越えている中、私は採用以来ずっと非組合員を通してきました。

 さてこのとき聞いた話ですが、組合と教育委員会との間にある合意が形成されていたというのです。それは氏家氏の指摘されているように、組合活動家でなければ管理職登用しないというものです。それによって出世希望のものほど、組合活動は熱心になるという仕組みです。熱心な「赤ヒラメ」(目が上をむいた=出世目当ての活動家)教師が多く出るという仕組みでした。

 事実私が勤務していた中学校にも元札幌教祖の委員長だった人が、教頭になって赴任してきました。この方はかつて教員に禁じられているストライキを指令していた人です。現在は教員ストは厳罰になり、出世コースから外れますので、ストはありません。この方は人物的には温厚な方ではありましたが、元反体制側だった方が体制側の幹部になれるという構図に、何か違和感を感じたのを覚えています。

 恐らく北教祖や山梨教祖ばかりでなく、全国ほとんどの県教祖で似たような密約があるのではないでしょうか?かつて部落解放同盟・県教祖・教育委員会の癒着で校長の自殺者を出した広島県も同じですね。この悪しきリングを断ち切るためには、日教組の支持する民主党政権打倒しかありません。しかし多くの情報弱者の国民はそれがわからないのです。本当に日本はこのまま崩壊の道をたどるのか、心配です。


■俊一さんより

 日教組の教師は、教師が国民の信託を受けていることを忘れているのではないかと思います。労働者であることもわかりますが、教師という仕事に対する職業倫理感が欠落しています。

 教師は、児童・生徒が大人になっても自ずから学び生きていけるように教え育むことが根本の仕事です。教師の偏狭なイデオロギーを実現するために、児童・生徒を洗脳することではありません。国民の税金を使って、反日思想をまき散らす不道徳には呆れかえりますね。

 話が変わりますが、授業が荒れたり成立しない教師の共通点は、授業が分からないことに尽きます。子どもに50分間も、意味のわからん授業を大人しく聞けという方が間違っています。そういう教師は、ほとんどが自分の授業力のなさを棚にあげて、生徒が悪い、親が悪い、システムが悪い、時間がない、雑務が多い、行事が多い、校長が悪いなどと責任転嫁をします。反省のないところには、進歩も向上もありません。

 児童・生徒たちが教師の授業力を信頼し、児童・生徒たちにその人格を慕い尊敬されるところに、教師のやりがいと幸福感があるのではないでしょうか。日々やりがいを感じて努力されている先生方には、心から感謝と敬意を表します。

■編集長・伊勢雅臣より

 私は多くの教師を友人に持っていますが、みな現在の教育を憂え、それぞれの場で懸命に奮闘しています。「赤ヒラメ」に国政と教育界を牛耳らせているのは、我々有権者の不見識と怠慢でしょう。



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