No.1181 朝日新聞は罵倒、呪詛(じゅそ)、偏見から脱却できるか
安倍政権への呪詛まみれの論説を載せながらも、「安倍政権を「評価する」が71% 朝日新聞世論調査」と報じたのは?
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■1.安倍首相に対する「罵倒、呪詛(じゅそ)、偏見」
「朝日新聞では、こんなヘイトまみれの文章を載せることが許されるのか」と始まる産経新聞9月3日付け、阿比留瑠比記者による「朝日の安倍首相批判は自己紹介」[阿比留]を読んで、驚きました。白井聡・京都精華大専任講師の論説「安倍政権の7年余りとは、日本史上の汚点である」を取り上げて、こう評しています。
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白井氏は、辞任を表明した安倍晋三首相の政権が憲政史上最長となったことを「恥辱と悲しみ」と書く。安倍政権を多くの日本人が支持してきたことについて「耐え難い苦痛」と記し、安倍政権の支持者に「嫌悪感」を持つと表明する。
さらに、隣人たちが安倍政権を支持しているという事実は「己の知性と倫理の基準からして絶対に許容できない」と主張し、その事実に「不快感」を示す。
安倍政権憎しのあまり、攻撃対象は市井の日本人にまで及んでいる。[阿比留]
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阿比留氏は「紙面を汚したくないので詳述は避けるが」として、「安倍政権に対する罵倒、呪詛(じゅそ)、偏見の吐露と論証なき決めつけ、陰謀論のオンパレード」と形容しています。白井氏が取り上げているのは、森友、加計、桜を見る会など、野党がこの数年来、国会を停滞させただけで、結局、何の「成果」も得られなかった問題だけです。
そして、これらの問題の追及を緩めてはならない、として、以下のような発言までしています。
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健康問題のために、この7年間余りに犯してきた罪に対する追及がうやむやになることは、絶対に避けられなければならない。仮に、健康問題が深刻化してその最も極端な事態、すなわち当人の死亡という事態が起こったとしても、すでに行なった悪行が消えるわけでは全くないのだ。[白井]
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一国の首相を「罪」人と決めつけ、たとえ「死亡」しても、その「悪行が消えるわけではない」とは、まるで北朝鮮の報道官が、安倍首相を糾弾しているような口調で、自由民主主義社会の「高級紙」に、このような憎悪に満ちた記事が登場するとは驚きでした。
ちなみに、この白井聡氏は、松任谷由実さんが安倍首相の会見を見て「泣いちゃった。切なくて」という発言に、「荒井由実のまま夭折すべきだったね。本当に、醜態をさらすより、早く死んだほうがいいと思いますよ」とフェイスブックで書き込み、ネットで炎上状態になりました。精華大学は理事長名義で「本学教職員として不適切な行為であった」との声明を出しています。
「当人の死亡」とか「死んだほうがいい」などという言説を公共の言論空間で振り撒くのは、異常としかいいようがありません。白井聡氏はレーニンの研究者とのことですが、革命のためには殺人も正当化するマルクス・レーニン主義の影響を受けると、人間的な良識も倫理感もなくしてしまう、という実例です。
■2.「ほとんどの政策が失敗に終わった」!?
安倍総理の辞任表明に、世界各国の首脳たちが表明したメッセージを見ると、この白井氏の言説の「論証なき決めつけ」が浮かび上がってきます。
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安倍晋三首相の辞任表明に、米国のトランプ大統領とドイツのメルケル首相は「残念だ」と言った。仲の悪い米欧指導者がともに、「いなくなると困る」と感じたのだ。
先進7カ国首脳会議(G7サミット)で米欧が対立すると、議長はよく「シンゾーの意見は?」と助けを求めた。安倍首相は原則を踏まえた発言で荒れた討議を落ち着かせた。メルケル首相が「多国間主義を掲げ、私たちの共通の価値観を示してくれた」と評したのは本音だろう。[三井]
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日本の首相が、国際外交舞台のど真ん中で、米欧の調整役まで果たしたのは、史上初めてでしょう。
内政においてはアベノミクスを主導しました。その成果は数字に明らかです。国民経済で最も大事と弊誌が考えるのは、働きたい人が働ける環境です。この点で、第二次安倍政権が発足した2012年12月の直前1年と、本年7月までの1年間を比べると、完全失業者数で112万人もの減少となっています。
完全失業者数とは仕事を求めていても、仕事が見つからずに働けなかった人です。そういう不幸な人が民主党政権時に比べて112万人も減りました。コロナ禍の影響で、ここ数ヶ月30万人ほど増加しましたが、それも含めてもの数字です。さらにもともと就職を諦めていた人などが労働市場に参入し、就業者は合計で430万人も増えました。
こういう国内外の成果を無視して、白井氏は「ほとんどの政策が失敗に終わった」と述べているのです。阿比留氏が「論証なき決めつけ」というのは、こういう事です。
■3.従軍慰安婦は「いわば社是のようなものです」
白井氏という特異なキャラクターは別として、こういう人物のこういう「ヘイトまみれ」の文章を平気で掲載する朝日新聞の異様な体質が、問題の根本にあります。第二次安倍政権発足時に、政治評論家・三宅久之氏がこういう発言をしたと伝えられています。
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朝日新聞の論説主幹の若宮啓文と会った時にね、「朝日は安倍というといたずらに叩くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか?」と聞いたら、若宮は言下に「できません」と言うんですよ。
で、「何故だ?」と聞いたら、「社是だからです」と。安倍叩きはうちの社是だと言うんだからねえ。社是って言われちゃあ・・・。[小川H24,p3]
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朝日自体は、若宮氏がこういう発言をした事実はない、と否定していますが、別の場で、若宮氏が「社是」という表現を使っていたとの証言があります。現在の安倍内閣で領土問題などの特命担当大臣を務めている衛藤晟一(せいいち)議員が、慰安婦問題について、若宮氏が「社是」だと言ったのを聞いたと証言しています。
平成9年に衛藤議員は、当時、同じく若手議員だった安倍氏などと、慰安婦問題をきっかけに「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を結成しました。そして、教科書会社や新聞社の人々を招いて議論する場を設けました。しかし、朝日新聞だけは誰も来ないので、自分たちで出向いていくことにしました。
衛藤議員は安倍議員とともに若宮氏に会って、説明しましたが、
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やりとりを重ねるうちに「ここがおかしいのではないですか」「ここはどう考えているのでしょう?」となっていきます。「従軍慰安婦」は存在するという立場で若宮さんは説明するのですが、徐々に説明に窮していきました。
それで私が「事実が違うじゃないですか。どうしてこういう報道を続けられるんですか?」と聞いたさい、若宮氏は「社の方針です。いわば社是のようなものです」と議論を打ち切るように言ったのでした。
二の句が継げないほどに驚きました。[衛藤]
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■4.安倍退陣に「多少は貢献ができたかなあ」
「安倍叩き」と慰安婦問題とテーマは違いますが、どうも若宮氏は「問答無用」という意味で、「社是だ」という言葉を使っていたようです。実際に「安倍叩き」が問答無用の社是の如くになっていた事は、当時の若宮氏や木村伊量社長の発言に窺うことができます。
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(木村伊量社長、2014年年頭挨拶)
「現政権が数の力を頼みに、・・・時代錯誤の国家主義を前面に押し出した憲法改正を目指すのなら、私たちは固い決意をもって向かい合わなければならないでしょう」と、政権との対決姿勢を鮮明に打ち出した。(朝日新聞有志『朝日新聞』、p223)[別冊正論編集部]
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若宮氏著書『闘う社説』
のちに展開された「安倍対朝日」の対立は、このとき火ぶたが切られていたのだろう。[別冊正論編集部]
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(第一次安倍政権が退陣した直後)
「新聞社は安倍に"かみつき"続けた。安倍総理を退陣に追い込むことに、「多少は貢献ができたかなあ」とも思っている。(平成21年12月、聖学院大学での講演録より、[別冊正論編集部]
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社長が安倍政権と「固い決意をもって向かい合わなければならない」とし、論説主幹が「安倍対朝日」、「(早期退陣に)多少は貢献ができたかなあ」と言っているのであるから、まさに「安倍叩き」が「社是」であった、と言ってもおかしくありません。
「社是」とは「こういう姿勢でやっていく」というトップの方針ですから「議論の余地」はありません。真の言論機関であれば、「政権」攻撃ではなく、個別の「政策」に対して是々非々の議論をすべきです。そういう議論を一切拒否して「安倍政権は叩く」では、言論機関ではなく政権打倒のためのプロパガンダ機関です。
その典型的な例が、冒頭の白井氏の文章でしょう。事実は無視して、「ほとんどの政策が失敗に終わった」「(死んでも)悪行が消えるわけでは全くない」という一方的かつ問答無用の文章に、プロパガンダ機関の「社是」がよく現れています。
■5.意図的にフェイク・ニュースを作って流した朝日新聞
「安倍政権打倒」という言論機関の本分を外れた「社是」に加えて、その方法についても、朝日新聞は意図的にフェイク・ニュースを作って流すという、報道機関としてあるまじき手を使っています。弊紙1034号[a]では、朝日新聞が加計事件を「作りだした」報道を論じました。
朝日新聞はそこで文科省の記録文書をスクープとして1面ぶちぬきで掲載しましたが、そこでは下記の文章にスポットライトがあたっていました。
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○ 設置の時期については、今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。[朝日新聞H29]
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いかにも安倍首相の意向で、加計学園の認可への圧力があったように読めますが、スポットライトから外れて、暗くなった部分では、次のような一文がありました。
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◯「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。[小川H27, 1718]
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文科省の文書での「総理からの指示に見えるのではないか」とは、明らかに総理の指示ではない、という前提でしょう。この一文をわざわざ暗くして読めなくしているのです。こういうフェイク・ニュースを自ら創作して、安倍政権攻撃をしているわけです。「社是」は言論機関失格ですが、「手段」は報道機関失格です。
■6.「考え方の異なるものを攻撃し」「必要以上の敵対姿勢」
冒頭の阿比留瑠比氏の記事では、安倍首相辞任発表後の朝日の社説も二編引用しています。
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野党やその支持者など、考え方の異なるものを攻撃し、自らに近いものは優遇する「敵」「味方」の分断。[朝日R020819]
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野党や批判勢力に必要以上の敵対姿勢をとる安倍氏の政治スタイル[朝日R020901]
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阿比留氏は、「考え方の異なる相手を必要以上に攻撃してきたのは朝日自身であり、朝日が重用する白井氏であろう」と指摘しています。朝日の社説の言葉を入れ替えれば、その意味がよく分かります。
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安倍政権やその支持者など、考え方の異なるものを攻撃し、自らに近いものは優遇する「敵」「味方」の分断。
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与党や保守勢力に必要以上の敵対姿勢をとる朝日新聞の報道スタイル
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■7.「安倍政権を「評価する」が71% 朝日新聞世論調査」
皮肉なことに、9月3日、こんなタイトルの記事が朝日紙面を飾りました。「安倍政権を「評価する」が71% 朝日新聞世論調査」。記事内容を一部引用すると:
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朝日新聞社が2、3日に実施した世論調査(電話)で、第2次安倍政権の7年8カ月の実績評価を聞くと、「大いに」17%、「ある程度」54%を合わせて、71%が「評価する」と答えた。「評価しない」は、「あまり」19%、「全く」9%を合わせて28%だった。・・・
第2次安倍政権では、森友・加計学園問題や、「桜を見る会」などの疑惑が相次いだ。安倍政権のもとで政治への信頼感が「高くなった」は18%、「低くなった」は21%で、ほぼ並んだ。「変わらない」は59%。[朝日R020903]
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簡明直截な見出しと、「必要以上の敵対姿勢」をまったく感じさせない冷静で客観的な本文を読むと、これぞ本来の報道機関らしい記事と感じ入りました。朝日新聞社内の良識派が、あまりにヘイトに溢れた白井氏の論説や自社の社説に反発して書いた記事かも知れない、とかすかな希望を持ちました。
朝日新聞のような巨大新聞社が、隅から隅まで呪詛・罵倒・偏見を当然とする異常人格者であるはずがありません。あちこちにそれを何とかしたいと思っている良識ある人々がいるはずです。弊紙でもご紹介した永栄潔(ながえ・きよし)氏[b]や長谷川熙(ひろし)氏[c]のような「ブンヤ魂」を護って闘った硬骨漢もいました。
立場は左翼でもリベラルでも良いから、真正の報道機関として正確に事実を報道し、真正の言論機関として是々非々の論陣を張って貰いたいものです。それが我が国の国民自身が、事実に基づいてとるべき政策を考えるという自由民主主義社会を護る道です。
(文責 伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(1034)「加計事件」 ~ 朝日新聞の謀略報道
朝日新聞はいかに「加計事件」を創りだしたか。
http://jog-memo.seesaa.net/article/201711article_1.html
b. JOG(926) 朝日新聞、マスコミ界の北朝鮮 ~ 永栄潔『ブンヤ暮らし三十六年』から
真っ当な報道記者は、こうして排除されていく。
http://jog-memo.seesaa.net/article/201511article_4.html
c. JOG(989) 朝日の「真実」、ブンヤの「事実」 ~ 長谷川熙『崩壊 朝日新聞』より
「何より事実を追求するという記者のイロハがこの新聞社から消滅していたのだ」
http://jog-memo.seesaa.net/article/201702article_2.html
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
・朝日新聞Digital、R02.09.03 「安倍政権を『評価する』が71% 朝日新聞世論調査」
https://digital.asahi.com/articles/ASN937F3RN92UZPS005.html?_requesturl=articles%2FASN937F3RN92UZPS005.html&pn=4
・朝日新聞Digital、R02.09.01 「(社説)安倍改憲 首相が自ら招いた頓挫」
https://www.asahi.com/articles/DA3S14605224.html
・朝日新聞Digital、R02.08.29 「(社説)最長政権 突然の幕へ 「安倍政治」の弊害 清算の時」
https://www.asahi.com/articles/DA3S14602394.html
・朝日新聞Digital、H29.05.17「加計学園の新学部『総理のご意向』 文科省に記録文書」
http://www.asahi.com/articles/ASK5K0494K5JUTIL08N.html
・阿比留瑠比「朝日の安倍首相批判は自己紹介」、『産経新聞』R020903
https://special.sankei.com/a/column/article/20200903/0001.html
・衛藤晟一「朝日に社是はない?」、『別冊正論 墜ちたメディア』、日刊工業新聞社、R01
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/481915205X/japanontheg01-22/
・小川榮太郎『約束の日 安倍晋三試論』★★★、幻冬舎、H24
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4344022378/japanontheg01-22/
・小川榮太郎『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(Kindle版)★★★、飛鳥新社、H27
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/486410574X/japanontheg01-22/
・白井聡「安倍政権の7年余りとは、日本史上の汚点である」【論座】R020830
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020082800004.html
・三井美奈「日本は『顔のない国』に戻るな」、『産経新聞』R020901
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