No.1221 「日露戦争は帝国主義国家どうしの争い」と「歴史総合」教科書は断定するが、、、
何の論拠も史実も示さずに、独断的な結論だけ押しつける記述では、「主体的対話的で深い学び」はできない。
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■1.歴史教科書のヘイトスピーチ
日露戦争は「韓国・満洲利権をめぐる帝国主義国家どうしの争いであった」と実教出版の「歴史総合」教科書は、断定しています[p107]。しかし、その主張を支える論拠も史実も述べられていません。これは例えば、何の根拠も示さずに「お前は泥棒だ」と非難するヘイト・スピーチと同類ではないでしょうか。
人を「泥棒」呼ばわりするなら、いつ、どこで、何を盗んだか、罪を立証しなければなりません。その根拠のつもりか、この一文の後に「→ Close UP」と注記があり、同じページに「Close UP 日露戦争と日本」と題したコラムがあります。その内容は:
・社会主義者、キリスト教徒の非戦論
・人々の生活への大きな負担
・戦勝の見返りが不十分で、日比谷焼き討ち
・アジア諸国に対する排外主義
など、いろいろ書かれていますが、これらが「日本は韓国・満洲利権を求める帝国主義国家」であることの論拠になっているとは思えません。
開戦原因に関しては、明成社が説いているように「ロシアに朝鮮半島を支配されたら、日本の独立も風前の灯火になるから、それを止めるべく開戦した」という説がありますが、社会主義者の反対があったからと言って、この説の否定にはなりません。後先考えずに「戦争反対」というのは、今の社会主義者も同様ですから。それ以外の項目も、開戦原因には関係ありません。
あるいは、本文ですぐ後に述べているように「日本は戦後,1905年に第2次日韓協約を締結し,韓国の外交権をうばい(保護国化),翌年に統監府を設置した」という結果から見れば、日本の魂胆は明らかではないか、と言いたいのかも知れません。
しかし、これにも別の説があって、「韓国の事大主義(強いものに従う日和見主義)が、日清戦争、日露戦争を引き起こしたように、すぐに他国を引き込んで、極東の不安定化を招く以上、保護国としていく他はない」と日本政府が判断した、とも言われています。
朝鮮の保護国化という行為が「日本が帝国主義国だった」という証拠だ、というなら、こちらの説を否定する論拠を示さなければなりません。
他の教科書も、明成社以外は「日露戦争は帝国主義国どうしの覇権争い」としており、いずれも説得力のある歴史事実は示していません。こういう内容を6月13日の「『歴史総合』教科書読み比べセミナー」でお話ししました。セミナーの内容は、以下のYouTubeで公開しておりますので、ぜひご覧ください。
「歴史総合」教科書読み比べ「日露戦争」
- 上(学習指導要領、開戦原因) https://youtu.be/Yw8xbDuDUt8
- 下(世界への影響、まとめ) https://youtu.be/sbhjlQgq_BA
(当日は、当方の手違いで100名の方しか入室できない設定となっており、多くの方にお聞きいただけず、まことに申し訳ありませんでした。大至急、YouTubeビデオとして、公開いたしましたので、ご容赦いたたけたら、幸いです。<(_ _)>)
■2.現役高校生が提案する「主体的対話的な歴史の学び方」
セミナーをご覧になった方々から、多くのお便りをいただきました。その一部をご紹介しながら、現在の歴史教育について、考えてみましょう。まずは、現役の高校生から長文のお便りをいただいて、驚きました。
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歴史の教科書の記述はある側面に偏った見方しか提供せず、読者もただその見方を受け入れるしかないというのは、高校生として教育を受ける身の私もしばしば感じることでした。
現在、私は受験生として日本史を大学受験のために学んでいますが、単語を暗記することを重視することが多くなっています。様々な書物の題名だけ覚えたところで内容を知らないのではしようがありませんし、数々の事件の首謀者などの名前を暗記したところでその事件の中身や意義を知らなくては意味がありません。
数えきれないほどの人々が積み上げた歴史を題名だけ並べてとらえるなんて、あまりに冒涜的です。(阿蘓大士(あそだいし)さん)
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特定の「偏った見方しか提供」しない教科書、書物の題名や事件の首謀者など「単語を暗記」するだけの授業、こうした問題を生徒の立場からも感じていたのですね。現在の歴史教育の問題点を、これほど深く考えている高校生がいた、ということは、嬉しい驚きでした。
さらに阿蘓大士さんは、歴史教育のありたい姿をこう記しています。
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また、そもそも歴史を誰かが教えるということ自体、際限があまりになく、不可能に近いことなのではないかと感じることもあります。”誰かが教える”という形をとった時点でその誰かの視点が必ず入るからです。
だからこそ、「主体的、対話的な学び」が学問には必要なんだと感じました。学校は、そんな学び方を生徒ができるようにきっかけを作ってあげるだけでいいのかもしれません。(阿蘓大士さん)
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教科書も「これが歴史の真実だ」と上から目線でご高説を垂れるのではなく、「著者としてこう考える、なぜなら」と自説を述べ、それに対して、生徒たちがそれぞれ自分はどう考えるか議論する。確かに、これこそが真の「主体的対話的な深い学び」でしょう。
■3.「日本って嫌い、恥ずかしい」
しかし、高校生でここまで深く考えられる人はやはり例外的でしょう。
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現在59歳の男性ですが、私が学生であった頃はどうだったのか思い出しながらの受講で、これで学びたい!と思わせたのが明成社の教科書でした。日露戦争前後のこと、とても素直にはいってきました。それに比して他社の教科書は、日本人であることを恥ずかしく思わせるものでした。こんな教科書で学んだら日本という国に誇りを持てなくなると思いました。・・・
私はこのセミナーで、各々の教科書を疑いの目で見ているから、おかしな記述に気づきます。また59年間の経験による知識により、うそに気づきます。しかし10代の学生であった頃の自分には全く気づかないでしょう。教科書の記述のまま日露戦争のことを脳にインプットし、日本って嫌い、恥ずかしいという観念が形成されるたことでしょう。(sigeoさん)
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経験も予備知識も少ない高校生に、ヘイトまみれの教科書で詰め込み教育をし、愛すべき点、誇るべき点を十二分に備えた祖国に対して「日本って嫌い、恥ずかしい」と思わせる。これは「精神的な強制収容所」での「基本的人権の蹂躙」ではないでしょうか。
■4.「選択の自由」のための教科書比較を
こういう事態を避けるために各教科書の読み比べが必要と、セミナーの中でお話ししましたが、賛同のコメントをいただきました。
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最後に言っておられていた「教科用図書のレビューが必要」とのお考えに賛成です。結局、現在の我々は、自分が受ける公教育についての事実上の選択の自由がないわけですから、これこそ違憲のように思います。
各教科書の内容を白日のもとに晒し、保護者なり教員なりが教科書を選択できるか、または選択できなかったとしても、少なくとも内容の比較のできる状況をつくるべきだと思いました。(Kenjiさん)
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確かに、中学高校の歴史教育を一種のサービス産業と捉えた場合、我々消費者の選択の自由は、あまりに限られています。たとえば、ある学校で、左翼教師が偏向教科書を使って、ひどい反日教育をしていたとしても、親にも子供自身にもそういう授業を拒否する道はほとんどありません。
これは、かつてのソ連で、自動車といえば国有企業が作ったひどい車しか選択肢がない状態とそっくりです。「選択の自由」が消費者主権の核心なのです。そして、「選択の自由」を一般消費者が行使するためには、商品の情報公開と比較が必要です。
■5.「父から自虐史観とは真逆のことを教えてもらっていました」
学校教育に対する補完手段として、家庭教育の大切さを訴えるお便りもいただきました。
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セミナーの最中、チャットでも書かせていただいたのですが、自虐史観があふれる歴史教科に染まるかどうかは親の姿勢、家庭での教育も影響していると思っています。
私は昭和40年代の生まれですが、北海道の教育現場は北教組で染まっていましたし、歴史はあまり重要視されていませんでした。・・・
むしろ、我が家は父が防衛省OBということもあり、自虐史観とは真逆のことを教えてもらっていました。ですのであまり学校で教わった歴史は信用していませんでしたし、家にあった本を読む方が多かったように思います。我が家が特殊だったのかもしれませんが、今となってはよかったと思います。(理恵子さん)
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確かに、家庭で親と話をする、というのは、学校教育の独占を打ち破る有力な補完手段ですね。台湾では、かつて国民党政権が「日本統治時代はひどかった」と学校で教えても、戦前の日本統治時代を体験していた両親が「そんな事はない」と自分の経験を子供たちに話したことで、それほど反日教育が広まらなかった、との事です。
歴史教育でも道徳教育でも、現代の日本人は家庭教育の大切さを忘れて、すべて学校に丸投げしている面があります。真っ当な教師にとってはそれが過重な重荷となっていますし、偏向教師にとっては独占的な「収容所教育」の絶好の機会となっているのです。
家庭で親子で歴史に関する話ができるような場を持つ。それは現在の日本では「特殊」かも知れませんが、それが「当たり前」の世の中になっていって欲しいものです。
■6.YouTubeで高校日本史補助教材として読めるように
学校教育の補完手段として、今回のようなセミナーがありうる、という過分なお言葉もいただきました。
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先ほど、貴「歴史総合」教科書読み比べセミナーを受講しました。大変分かりやすい歴史セミナーでした。
私など、やはり表面しか理解していなかったようです。特に日露戦争が帝国主義国間の戦いではなく、双方の軍事力の差からしても、
全くの自衛戦争であった事が得心できました。それに、インド・ベトナムの事なども、上っ面の事で理解していたのが、ダメだった事もよく分かりました。
この講義をYouTubeなどで、高校日本史補助教材として全国の高校生が読むと非常に分かりやすいし、高校生に対してテキストは慎重に読まなければならないぞ、意図されて書かれていないかと、行間を読む訓練になると思います。(Sunaoさん)
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理想を言えば、私だけでなく、もっと多くの識者が様々な見方をYouTubeなりブログで公開し、そうした多様な意見の中で、生徒たちが話し合い、考える、という状態がベストです。それこそが「主体的対話的な深い学び」への道でしょう。そうした中でなら、史実に基づかない独断的な自虐史観など簡単に排除されてしまう、と思うのです。
また教科書に対して、一方的な偏向史観で「意図されて書かれていないかと、行間を読む訓練」をする、というのは、「主体的」に考える良い手段かと思います。教科書まで疑いをもって読まなければならない、というのは、情けない状態ではありますが、新聞やテレビで、これだけフェイクニュースが横行している現代日本では、よい予行演習になるでしょう。
■7.「深い学び」とは
「主体的対話的で深い学び」の「深い学び」とは何か、を考えさせるコメントもいただきました。
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ベトナムとの交流、東遊運動については初めて知りました。東南アジアの各国との繋がりがいろいろな所であったことが窺え、もっと知りたくなりました。戦前は中国や朝鮮半島からも留学生が多く来日し学んでいました。そしてそれを助けるスポンサーとなる篤志家が多く存在した日本。戦前の日本は何と素晴らしい国だったのか、と誇りに思います。・・・
独立を失った民族の悲しみ、チベット、ウィグル、モンゴル、香港、世界には他にもあります。その人々の悲しみが、もしかするとさらに広がってしまうかもしれない、という不安があります。これも歴史を学びながら考えさせたいことだと思いました。(芳彦さん)
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日露戦争の勝利は、属国や植民地にされていた地域の人々に、独立への希望を与えました。また、その後も、我々の先人たちは自由独立のための支援を様々に行いました。自由独立を求める人々の気持ちに共感し、また彼らを勇気づけ、助けた我が先人たちの志を誇りに思い、受け継ごうと志す。そういう国民を育てることが、「深い学び」ではないでしょうか。
(文責 伊勢雅臣)
■リンク■
・YouTube「歴史総合」教科書読み比べ「日露戦争」
-上(学習指導要領、開戦原因) https://youtu.be/Yw8xbDuDUt8
-下(世界への影響、まとめ) https://youtu.be/sbhjlQgq_BA
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
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・各教科書の見本本は公開されていますが、市販はまだです。
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