号外 「遍参道楽」のすすめ ~ 敬する人物と出会うことが、生き方を学ぶ第一歩
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■1.毎朝の脳のウォーミングアップ
朝、仕事に取りかかるのに、なんとなく気が乗らない、とか、どの仕事から取りかかろうか、などと、グズグズ時間をロスする事はないでしょうか? そういう「グズグズ時間」を無くすためには、毎朝一番にやる事を決めておいて、機械的に始めると良いと何かの本で読みました。
そこで、私はある本を取り上げて、毎朝の脳のウォーミングアップを兼ねて、本の一節を音読する、ということを何年も続けています。音読をすることで、脳が目覚め、エンジンがかかる感じがします。その勢いで、その日の仕事に取りかかります。
現在、読んでいる本は『安岡正篤(まさひろ)一日一言』(致知出版社)で、新書版一ページの上下にそれぞれ一日分の片言隻句を紹介しているので、毎朝少しづつ音読するには好都合です。この本は本年の4月7日から始め、1ページ、すなわち2日分を毎朝声を出して読みます。出張などでできない日もありますが、この4ヶ月で半分ほど読み終わりました。
その日の分を読むと、そこから前のページに遡っていきます。黄色のマーカーで線を引いたり、青のボールペンでキーワードを囲ったりしていて、目立つ処を拾い読みしながらパラパラとめくっていくだけですので、数分で終わります。
その過程で、今日読んだところと繋がりがある言葉が目に入ってきたりして、「ああ、こういう意味だったのだ」と理解が深まります。単に1度だけで読み通してしまうよりも、「読書百遍」で自ずと理解が深まり、自分の血肉になるような気がします。
■2.遍参(へんさん)道楽と「敬する心」
安岡正篤氏の学問は中国の古典が中心で、堅苦しいという印象を持っていましたが、この『一日一言』で実はもっと余裕のある、ゆったりした面もあるのだと知りました。たとえば次のような記事があります。
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4月29日 遍参(へんさん)道楽
自然の到るところに名山大山があるように、古今東西、いろいろ英雄哲人碩学賢師がある。そういう尊い人、その教学を、生きている間にできるだけ遍参し、これを楽しもうという道楽趣味が私には非常にあるのであります。
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遍は「あまねく」、参は「参ずる」で、古今東西、無数の「英雄哲人碩学賢師」の許にできるだけ参じて、その声を聴き、その学問を楽しもう、というのです。
この記事を読んだ後で遡っていくと、「敬する心」という一節が目にとまりました。
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2月9日 敬する心
人間が人間たる意義を求めるならば、先(ま)ず敬するという心を持つことである。人間が現実に留まらないで、限りなく高いもの、尊いもの、偉大なるものを求めていく、そこに生ずるのが敬という心である。この敬の心が発達してくると、必ず相対的に自分の低い現実を顧りみてそれを恥する心が起る。
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いろいろな「英雄哲人碩学賢師」に接していくと、自分と波長のあう人物に出会います。そこから「敬する心」が生じていきます。
こういう一節を読むと、現代日本の教育でもっとも欠けているのが「敬する心」を育てることだ、と気がつきます。でも、学校では教わらなくとも、自分自身の学問で「遍参道楽」を続けていけば、自ずから「敬する心」も育っていきます。
■3.毎月、立派な志をもった人物が何人も登場する月刊誌
「遍参道楽」をするには、古人とは限りません。立派な志をもって現代を生きている人がいかに多いか、毎月そういう人が何人も登場する月刊誌『致知』を読めば、驚かされます。
私は毎月の『致知』を読んで、これはと思った人物が登場する記事を読むと切り抜き、スキャナーで読み込んでEvernoteというデータベース・ソフトにため込むという作業をここ十数年ほどしています。今朝ざっと数えてみたら318編ほども貯まっていました。それ以前の記事はスクラップブックに紙のまま保存していますが、それらを加えると、500編は超えるでしょう。
『致知』の良い点は、実に様々な分野の凄い人が登場して、こんな人物もいたのか、と驚きの出会いがあることです。まさに安岡師の言われる「遍参道楽」そのものです。

■4.舞台の上で亡くなった能楽師
最近の切り抜きから、印象に残った出会いを二、三、ご紹介しておきましょう。
8月号に登場された能楽師の安田登氏は、松尾芭蕉に関する徹底した洞察にも驚かされましたが、ふと述べられた次のようなごく短い一言にも、氏の生き方が窺われました。
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実は高齢の能楽師が先日、舞台で亡くなりましてね。膝(ひざ)の上に笛を立て、吹くのを待つ姿勢でそのまま倒れました。きょう体調が悪いから舞台を休むとは言わない。それが私たち能楽師の生き方です。きょう一日の舞台を精いっぱい勤め上げるんです。
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「きょう一日の舞台」には、「きょう一日の観客」がいるのですから、その観客の期待に応える舞台を見せなければならない。そして、どんな職業にも「きょう一日の舞台」があり、「きょう一日の観客」が見ていると思えば、この能楽師の覚悟はどんな仕事にも通ずる「生き方」でしょう。
■5.「我々の営みは、大いなるものに導かれている」
本年6月号に登場された多摩大学大学院名誉教授・田坂広志氏。「全国から7千名の経営者が集う田坂塾」を開かれている、という紹介文から、経営分野の発言をされているのかと思ったら、実に深い人生哲学をお持ちで、「我々の営みは、大いなるものに導かれている」として、こんな発言をされています。
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たとえば、私にとって、何かを執筆する営みは、自分が執筆するというよりも、「大いなる何か」に導かれ、書かされているという感覚なのですね。富士に向かって祈り、大いなる何かに繋(つな)がり、そこから降りてくるものを言葉にしているのです。その「降りてくる」という感覚、天啓(てんけい)のような直観を大切にして、執筆をしています。人智で考え出した文章は、読者の心に伝わらないと思っているからです。
それゆえ、執筆のときは、必ず、富士に向かって「導き給(たま)え」と祈ります。それは、僅(わず)か四百字の文章でも、二百頁の本でも、全く同じです。何かの用で執筆を中断しても、机に戻って再び「導き給え」と祈り、書き始める。従って、一日に何十回も祈ることが、自然に私の習慣になっています。
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「きょう一日の舞台を精いっぱい勤め上げる」事を続けていれば、そこに「天啓」のようなものが降りてきて、「大いなるものに導かれている」事が実感できるようになるのではないでしょうか。
私自身もこういう心で仕事に向かわねば、と思ったのと同時に、この方に学ぶ7千名もの経営者が「きょう一日の舞台を精いっぱい勤め上げ」つつ、「大いなる何か」に導かれて企業経営を進めていたら、今後の我が国もぐんぐん良くなるのではと思われました。
■6.ドラッカーが50年以上続けたフィードバック分析
ドラッカー学会共同代表理事の佐藤等氏の連載「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」は、見開き2ページで、ドラッカーの本をあちこち読みかじっただけの私にとっては、ドラッカーはこんな事も言っていたのか、としばしば目を見開かされる思いをします。
7月号では、「自己評価」をテーマとして、こう述べています。
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ドラッカーは・・・イエズス会の修道士やカルバン派の牧師の次の方法を取り入れ、自己評価を自分でもできるようにしたのです。
「何か重要な決定をする際に、その期待する結果を書きとめておかなければならないことになっていた。一定期間の後、たとえば九か月後、実際の結果とその期待を見比べなければならなかった」
『プロフェッショナルの条件』
つまり、事前に期待を書きとめておくことで「このくらいでいいか」などと事後に期待値を調整する暖昧(あいまい)さを排除しました。
ドラッカーはこれをフィードバック分析と呼び、活動の成果と自らの成長に焦点を合わせる方法とし、五○年以上続けたのです。
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ドラッカーの息の長い、深い洞察に満ちた著作群は、こういう姿勢から生まれたものだったのですね。「きょう一日の舞台を精いっぱい勤め上げ」ながらも、9ヶ月後にはこういう処まで技量を上達させようと、自己評価を何十年も続ける。その間に「大いなる何か」が「天啓」を次々と下ろして、目指すべき高嶺を示してくれるでしょう。これこそが「名人」への道に違いない、と思いました。
■7.敬愛する人物と出会って、自分の一隅をより明るく照らそう
最近の3号で、各号1編を取り上げても、これだけの「遍参道楽」ができます。こういう人々の生き様に触れれば「敬する心」が自ずから生じ、「相対的に自分の低い現実を顧りみてそれを恥する心」が芽生えてきます。それが『致知』の目指す「人間学を学ぶ」ということでしょう。
こういう月刊誌の読者が一人増えるごとに、その人がその人なりの「一隅」を照らして、それだけ日本の将来が明るくなっていくと信じます。
ちょうど創刊44周年記念の感謝キャンペーンが始まったところで、新規に定期講読をした方には、先頃亡くなった稲盛和夫氏の『「成功」と「失敗」の法則』のプレゼントなど、いろいろな特典が提供されているようです。
『致知』を読んで、毎月の「遍参道楽」を通じて、あなたなりの「敬する」人物と出会い、それによって、ご自身の一隅をより明るく照らしていただければ、と願ってやみません。
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創刊44周年記念
感謝キャンペーン
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期間:令和4年9月21日(水)まで
《プレゼント紹介》
【全員プレゼント】
詩人・坂村真民先生の金言入り壁紙《非売品》
【新規で定期購読をいただいた方】
稲盛和夫・著『「成功」と「失敗」の法則』
【お知り合いに定期購読をプレゼントいただいた方】
『1日1話 、読めば心が熱くなる
365人の生き方の教科書』
【『致知』をご紹介いただいた方】
オリジナルクリアファイル(非売品)
【壁紙ダウンロードや特典詳細はこちらをご覧ください】
https://www.chichi.co.jp/specials/2022media_soukan_cp/
『致知』購読料:
3年:28,500円(1ヶ月あたり792円)
1年:10,500円(1ヶ月あたり875円)
(文責 伊勢雅臣)
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