No.0477 「戦後体制からの脱却」を進める安倍首相 ~ 平成18年の国際派日本人
外交、教育、防衛と、安倍政権は「戦後体制
からの脱却」を着々と進めている。
■転送歓迎■ H18.12.24 ■ 34,955 Copies ■ 2,333,041 Views■
■1.着々と進む「戦後体制からの脱却」■
郵政民営化に反対して離党した「造反組」議員の復党問題で、
安倍首相に対する支持率が、発足直後の64パーセントから
47%に急落した、と伝えられている。安倍首相はこの問題を
中川秀直・自民党幹事長に一任したのだが、世論調査では、こ
の問題に対して首相が指導力を「発揮したとは思わない」との
回答が67パーセントに達した。その後も、タウン・ミーティ
ングでのやらせ質問や、政府税制調査会・本間正明会長の官舎
入居問題などで、逆風が強まっている。
しかし、マスコミがこれらの問題に騒いでいる間に、今国会
に提出された21法案はすべて成立した。その中には約60年
ぶりの教育基本法改正、防衛庁の「省」昇格の重要法案が含ま
れていた。安倍内閣の掲げる「戦後体制からの脱却」は、内閣
発足わずか3ヶ月で大きな第一歩を記したと言える。
「戦後体制」と言えば、その代表は共産党や社民党、民主党左
派などの左翼政党、そして朝日新聞やTBSに代表される一部
の左翼的マスコミである。これら「戦後体制」を代表してきた
勢力が、「戦後体制の脱却」を掲げる安倍政権を目の敵にして
きたのも、けだし当然であろう。
今回はこれら一部マスコミや野党と戦いつつ「戦後体制の
脱却」を進める安倍政権の足跡を追ってみよう。
■2.安倍憎しの「ゲリラ活動!?」■
朝日新聞やTBSは、従来から何とか安倍政権の誕生を阻止
しようと、異様な熱意を燃やしてきた。
朝日は昨年1月12日、NHKが4年も前に放送した従軍慰
安婦に関する番組で、中川昭・経産相(当時)と安倍・内閣官
房副長官(同)が圧力をかけて番組を改変させたと報じた。
NHKは7時のニュースで「朝日の虚偽報道」と反撃し、中
川・安倍両氏も「事実無根」と訂正・謝罪を要求した。朝日は
何ら根拠を示せず、窮地に陥った[a]。朝日はその後も頬被り
を続けているが、この失敗以来、いよいよ安倍憎しの情を募ら
せたようだ。
安倍氏が小泉前首相の後継として注目を集めると、朝日は対
抗馬・福田康夫氏に6月20日付け社説で『福田さん、決断の
時だ』と決起を促した。7月5日、福田氏が正式に出馬しない
と表明すると、23日付け社説では『安倍氏独創でいいのか』
と歯ぎしり。「福田がダメなら小沢だ」とばかり、9月11日、
民主代表選の前日に小沢ビジョンをスクープし、夕刊一面トッ
プで『民主、格差是正を全面、保守取り込み狙う』と派手に持
ち上げた。
しかし朝日の怨念空しく、安倍首相が誕生すると、9月21
日社説では『不安一杯の船出』、同27日付社説では『果たし
てどこへゆく』と、不安をかき立てた。しかし、新首相への世
論支持率64パーセントという逆風の中では、「負け犬の遠吠
え」に過ぎなかった。
一方、TBSはテレビならではのイメージ戦略で安倍氏を攻
撃した。7月21日の「イブニング・ファイブ」では、満洲で
の731部隊による細菌戦計画の番組中、何の関係もない安倍
氏の顔を大写しにして、「ゲリラ活動!?」のテロップを流し
た。
安倍氏が不快感を示し、総務省も調査に入ると、TBSは
「偶然」と謝罪したが、報道局長の事前チェックも入るはずの
報道番組に、こんな「ミス」が見逃されるはずもない。安倍氏
の祖父、岸信介元総理が満洲国の官僚だったことから、731
部隊との関係を示唆し、安倍氏のイメージダウンを図ろうとい
う卑劣な戦術だった。公共の電波を使うマスコミ機関が、ここ
までやるのは、無法な「ゲリラ活動!?」としか言いようがな
い。[1,p61]
■3.「侵略戦争」村山談話の継承と空洞化■
一方、国会内では野党が、安倍首相に歴史観に関する集中質
問を続けた。なんとか安倍首相から問題発言を引き出して、足
下を掬(すく)おうという魂胆だろう。
まず10月3日、共産党の志位和夫議員が平成7(1995)年の
村山談話について、「国策を誤り、戦争への道を歩んだという
認識を共有するのかどうか」と問い糾した。首相は村山談話を
継承する、としつつも、こう付け加えた。
一方、先ほど申し上げましたように、政治家の発言は政
治的、外交的な意味を持つものであることから、歴史の分
析について政治家が語ることについては、やはり謙虚であ
るべきだと考えております。
さらに社民党の福島みずほ議員が、翌4日の参院本会議で同
様な質問を繰り返すと、
侵略戦争という概念については国際法上確立したものと
して定義されていない・・・
村山談話を継承しつつも、「侵略戦争」の国際法上の定義は
なされていない、歴史について語ることは政治家は「謙虚」に
なるべき、と談話の内容自体を空洞化させる発言を行った。
■4.「従軍慰安婦」河野談話の継承と空洞化■
さらに10月6日、志位議員が旧日本軍が「従軍慰安婦」の
強制連行に関わったという河野談話について質問すると、首相
は、それを継承すると答えつつも、
いわゆる狭義の強制性と広義の強制性があるであろう。
つまり、家に乗り込んでいって強引に連れていったのか、
また、そうではなくて、これは自分としては行きたくない
けれどもそういう環境の中にあった、結果としてそういう
ことになったことについての関連があったということがい
わば広義の強制性ではないか。・・・
今に至っても、この狭義の強制性については事実を裏づ
けるものは出てきていなかったのではないか。
また、私が議論をいたしましたときには、吉田清治とい
う人だったでしょうか、いわゆる慰安婦狩りをしたという
人物がいて、この人がいろいろなところに話を書いていた
のでありますが、この人は実は全く関係ない人物だったと
いうことが後日わかったということもあったわけでありま
して、そういう点等を私は指摘したのでございます。
ここでも河野談話を継承すると言いつつも、「家に乗り込ん
でいって強引に連れていった」というような「狭義の強制」は
事実として否定している。
■5.安倍首相の尻尾をつかめなかった野党■
村山談話や河野談話は政府として公式に出してしまったもの
だから、それをいきなりひっくり返したら、それこそ一部マス
コミや野党が鬼の首をとったように大騒ぎし、そうなれば中韓
も首相を迎えるわけにはいかなくなったであろう。
そこで、安倍首相は、両談話を継承するとしつつも、「侵略
戦争」の定義が確立していない、とか、強制と言っても狭義の
ものではない、として、実質的に空洞化を図ったのである。
この巧妙なアプローチに、野党は安倍首相の尻尾を掴むこと
ができずに、集中攻撃も不発に終わった。
その後、下村博文官房副長官が講演の中で、個人的見解とし
つつも、河野談話について「もう少し事実関係をよく研究し、
時間をかけ客観的に科学的な知識を収集して考えるべきだ」と
述べた。
現実主義的なアプローチの中で、時間をかけて粘り強く自ら
の信念を貫くのが安倍流のようだ。今後も村山談話や河野談話
の見直しを徐々に進めることを期待したい。これも「戦後体制
からの脱却」の重要な一歩である。
■6.靖国に「行くか行かないか、は言わない」■
政権誕生から2週間も経たないうちに、安倍首相は10月8
日に中国を訪問し、翌9日には韓国を訪れた。
「靖国参拝をやめない限り、中韓は首脳会談に応じない」とい
うのが、一部マスコミの決まり文句だったが、安倍首相は「靖
国神社に参拝したか、しなかったか、するか、しないかについ
て申し上げない」という態度で押し通した。それでも中韓が訪
問を受け入れたことで、この一部マスコミの決まり文句は誤っ
ていた事が明白になった。
靖国に関しては小泉前首相が最後まで折れなかったことで、
中韓はこれ以上、靖国を外交カードにすることをあきらめたわ
けで、その機を逃さずに利用した安倍首相の政治的判断が奏功
したのである。
これを一部マスコミは「曖昧戦術」と批判するが、「曖昧」
で悪いことはない。もともと「一国の首相が戦没者の追悼をす
るのを、他国がとやかく言うこと自体がおかしい」と言うのが
日本側の主張なのであって、安倍首相が参拝について曖昧にし
たまま、中韓が首脳会談を受け入れた、ということで、日本側
が主張を押し通した形となったわけである。
■7.「曖昧」にしておくことが、双方の政治的利益に適う■
中国側は胡錦濤国家主席、呉邦国全人代委員長、温家宝総理
とトップが会談に応じた。会談後の記者会見では、冒頭から靖
国参拝に関する質問があったが、安倍首相はこう答えている。
靖国神社の参拝については、私の考えを説明した。そし
てまた、私が靖国神社に参拝したかしなかったか、するか
しないかについて申し上げない、それは外交的、政治問題
化している以上、それは申し上げることはない、というこ
とについて言及した。その上で、双方が政治的困難を克服
し、両国の健全な発展を促進するとの観点から、適切に対
処する旨述べた。私のこのような説明に対して、先方の理
解は得られたものと、このように思う。
中国側の要望も「政治的障碍を取り除いて欲しい」というこ
とで、さすがに「靖国参拝をやめよ」などとは言っていない。
「政治的障害」にさえならなければ、靖国参拝について、行っ
てもよいとも、いけないとも言わない。こちらも「曖昧戦術」
なのである。
現時点では「曖昧」にしておくことが、双方の政治的利益に
適うわけで、「一国の首相が戦没者の追悼に行くことを、他国
がとやかく言うこと自体がおかしい」という国際常識にようや
く立ち戻ったわけである。
来年の靖国参拝については、首相自身の胸算用にかかってい
るが、現実的な対応をしながらも原則を貫く安倍流に期待した
い。
■8.外交における「戦後体制の脱却」■
靖国問題以外については、中韓に対して安倍首相が明確な主
張をしている点を見落としてはならない。中国側との会談の後
の日中共同プレス発表では、こう公表されている。
日本側は、戦後60年余、一貫して平和国家として歩ん
できたこと、そして引き続き平和国家として歩み続けてい
くことを強調した。中国側は、これを積極的に評価した。
首相は記者会見において、北朝鮮問題、拉致問題、東シナ海
資源開発問題などについても、首相から考えを説き、中国側か
ら理解が示された、と述べている。従来、日中間の最大の問題
とされていた歴史問題は、「歴史を直視し、未来に向かい」、
および「日中有識者による歴史共同研究を年内に立ち上げる」
という2点だけで片付けられている。
日中関係の正常化を必要としていたのはむしろ中国側であり、
小泉前首相への靖国批判で上げた拳の下ろし所を探っていた中
国が、首相交替という機会に素早く乗ったのである。中国の
「君子豹変」に、日本の一部マスコミは2階に上がったまま梯
子をはずされた形となった。
一方、韓国との首脳会談では、「豹変」しない盧武鉉大統領
が、冒頭の40分以上も、慰安婦、歴史教科書、靖国神社に替
わる国立追悼施設など、従来通りの主張を繰り返したが、安倍
首相は一切取り合わず、そうした歴史認識を文書に表そうとし
た韓国側の要求を拒否した。かくて韓国とは共同の文書発表す
ら行われないという異例の事態となった。
いずれにせよ、首相就任直後の電撃的な中韓訪問は、その内
容においても、従来の歴史問題への謝罪から始まる戦後の対中
韓外交を完全に脱皮し、主張する外交に転換した、という点で
画期的なものであった。これは外交面における「戦後体制から
の脱却」であった。
■9.着々と進む「戦後体制の脱却」■
12月15日、改正教育基本法が成立。日教組は国会前のデ
モ行進などで組合員約1万5千人を動員した。平日の授業も放
り出しての教員のデモで、支出総額3億円というから、ただ事
ではない。
日教組がこれだけしゃかりきになるのも理由がある。従来法
の「不当な支配に服することなく」という文言を、日教組は文
部科学省や教育委員会の施策や指導に反対する根拠としてきた
のだが、今回「教育は、、、この法律及び他の法律の定めると
ころにより行われるべきものであり」と追加されて、法律に基
づく教育行政は「不当な支配」に当たらない、と明記された。
これでようやく教育が法の支配のもとに行われることとなっ
た。この当たり前のことが戦後60年も放置されてきたわけで
ある。
さらに安倍首相は12月19日夜の記者会見で、憲法改正に
ついて「歴史的な大作業だが、私の在任中に何とか成し遂げた
い」と明言した。その改正手続きを定める国民投票法案に関し
ては、来年の通常国会で成立を目指す考えを示した。
そもそも憲法改正には国民投票が必要だと現行憲法には書い
てあるが、その投票のための法律すら戦後60年間も制定され
ずに来ていたのは、どう見ても異常である。
外交、教育、防衛、そして最終的には憲法へと、占領軍が残
した「戦後体制」の脱却に、安倍政権は着々と取り組んでいる。
来年の進展に期待したい。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(401) 北風と朝日
ある朝日新聞記者が北朝鮮擁護のために でっちあげ記事を書
いたという重大疑惑。
b. JOG(339) 安倍晋三 ~ この国を守る決意
政治家は「国民の生命と財産を守る」という ことを常に忘れ
てはいけないと心に刻みました。
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 西村幸佑他『「反日マスコミ」の真実』★★、オークラ出版、H18
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「「戦後体制からの脱却」を進める安倍首相」に寄せられたおたより
ネコノミストさんより
安倍首相については、「格差容認」の経済方針だけが目に付
いて、支持できませんでした。(そもそも、公共財の提供を通
じて、富を効率的かつ公平に再分配するのが政府の役割ではな
いか。その役割を放棄して、日本経済が良くなるものか、と)
しかし、本号を通じて、外交についてはかつての過ちを覆す
に十分の辣腕を揮っていることを知りました。脱戦後体制につ
いては、頑張ってもらいたいと思います。
それにしても、マスコミは安倍首相の快挙を、全く伝えよう
としていませんね。反論することすら、焦点を当てる結果にな
ることを、彼らなりに学んでいるのでしょうか・・・
■ 編集長・伊勢雅臣より
マスコミは「支持率急降下」などと囃し立てていますが、登
場直後の70%が異常で、下がっても50%近くというのは、
退陣前の小泉内閣と同水準です。ちなみに小泉内閣の在任中の
平均支持率は50%で、わずか8ヶ月で退陣した細川内閣に次
いで戦後第2位です。でも、安倍首相には国民の人気取りなど
に気をとられず、国家百年の計のもと、「戦後体制からの脱却」
を着々と進めていただきたいと思います。
からの脱却」を着々と進めている。
■転送歓迎■ H18.12.24 ■ 34,955 Copies ■ 2,333,041 Views■
■1.着々と進む「戦後体制からの脱却」■
郵政民営化に反対して離党した「造反組」議員の復党問題で、
安倍首相に対する支持率が、発足直後の64パーセントから
47%に急落した、と伝えられている。安倍首相はこの問題を
中川秀直・自民党幹事長に一任したのだが、世論調査では、こ
の問題に対して首相が指導力を「発揮したとは思わない」との
回答が67パーセントに達した。その後も、タウン・ミーティ
ングでのやらせ質問や、政府税制調査会・本間正明会長の官舎
入居問題などで、逆風が強まっている。
しかし、マスコミがこれらの問題に騒いでいる間に、今国会
に提出された21法案はすべて成立した。その中には約60年
ぶりの教育基本法改正、防衛庁の「省」昇格の重要法案が含ま
れていた。安倍内閣の掲げる「戦後体制からの脱却」は、内閣
発足わずか3ヶ月で大きな第一歩を記したと言える。
「戦後体制」と言えば、その代表は共産党や社民党、民主党左
派などの左翼政党、そして朝日新聞やTBSに代表される一部
の左翼的マスコミである。これら「戦後体制」を代表してきた
勢力が、「戦後体制の脱却」を掲げる安倍政権を目の敵にして
きたのも、けだし当然であろう。
今回はこれら一部マスコミや野党と戦いつつ「戦後体制の
脱却」を進める安倍政権の足跡を追ってみよう。
■2.安倍憎しの「ゲリラ活動!?」■
朝日新聞やTBSは、従来から何とか安倍政権の誕生を阻止
しようと、異様な熱意を燃やしてきた。
朝日は昨年1月12日、NHKが4年も前に放送した従軍慰
安婦に関する番組で、中川昭・経産相(当時)と安倍・内閣官
房副長官(同)が圧力をかけて番組を改変させたと報じた。
NHKは7時のニュースで「朝日の虚偽報道」と反撃し、中
川・安倍両氏も「事実無根」と訂正・謝罪を要求した。朝日は
何ら根拠を示せず、窮地に陥った[a]。朝日はその後も頬被り
を続けているが、この失敗以来、いよいよ安倍憎しの情を募ら
せたようだ。
安倍氏が小泉前首相の後継として注目を集めると、朝日は対
抗馬・福田康夫氏に6月20日付け社説で『福田さん、決断の
時だ』と決起を促した。7月5日、福田氏が正式に出馬しない
と表明すると、23日付け社説では『安倍氏独創でいいのか』
と歯ぎしり。「福田がダメなら小沢だ」とばかり、9月11日、
民主代表選の前日に小沢ビジョンをスクープし、夕刊一面トッ
プで『民主、格差是正を全面、保守取り込み狙う』と派手に持
ち上げた。
しかし朝日の怨念空しく、安倍首相が誕生すると、9月21
日社説では『不安一杯の船出』、同27日付社説では『果たし
てどこへゆく』と、不安をかき立てた。しかし、新首相への世
論支持率64パーセントという逆風の中では、「負け犬の遠吠
え」に過ぎなかった。
一方、TBSはテレビならではのイメージ戦略で安倍氏を攻
撃した。7月21日の「イブニング・ファイブ」では、満洲で
の731部隊による細菌戦計画の番組中、何の関係もない安倍
氏の顔を大写しにして、「ゲリラ活動!?」のテロップを流し
た。
安倍氏が不快感を示し、総務省も調査に入ると、TBSは
「偶然」と謝罪したが、報道局長の事前チェックも入るはずの
報道番組に、こんな「ミス」が見逃されるはずもない。安倍氏
の祖父、岸信介元総理が満洲国の官僚だったことから、731
部隊との関係を示唆し、安倍氏のイメージダウンを図ろうとい
う卑劣な戦術だった。公共の電波を使うマスコミ機関が、ここ
までやるのは、無法な「ゲリラ活動!?」としか言いようがな
い。[1,p61]
■3.「侵略戦争」村山談話の継承と空洞化■
一方、国会内では野党が、安倍首相に歴史観に関する集中質
問を続けた。なんとか安倍首相から問題発言を引き出して、足
下を掬(すく)おうという魂胆だろう。
まず10月3日、共産党の志位和夫議員が平成7(1995)年の
村山談話について、「国策を誤り、戦争への道を歩んだという
認識を共有するのかどうか」と問い糾した。首相は村山談話を
継承する、としつつも、こう付け加えた。
一方、先ほど申し上げましたように、政治家の発言は政
治的、外交的な意味を持つものであることから、歴史の分
析について政治家が語ることについては、やはり謙虚であ
るべきだと考えております。
さらに社民党の福島みずほ議員が、翌4日の参院本会議で同
様な質問を繰り返すと、
侵略戦争という概念については国際法上確立したものと
して定義されていない・・・
村山談話を継承しつつも、「侵略戦争」の国際法上の定義は
なされていない、歴史について語ることは政治家は「謙虚」に
なるべき、と談話の内容自体を空洞化させる発言を行った。
■4.「従軍慰安婦」河野談話の継承と空洞化■
さらに10月6日、志位議員が旧日本軍が「従軍慰安婦」の
強制連行に関わったという河野談話について質問すると、首相
は、それを継承すると答えつつも、
いわゆる狭義の強制性と広義の強制性があるであろう。
つまり、家に乗り込んでいって強引に連れていったのか、
また、そうではなくて、これは自分としては行きたくない
けれどもそういう環境の中にあった、結果としてそういう
ことになったことについての関連があったということがい
わば広義の強制性ではないか。・・・
今に至っても、この狭義の強制性については事実を裏づ
けるものは出てきていなかったのではないか。
また、私が議論をいたしましたときには、吉田清治とい
う人だったでしょうか、いわゆる慰安婦狩りをしたという
人物がいて、この人がいろいろなところに話を書いていた
のでありますが、この人は実は全く関係ない人物だったと
いうことが後日わかったということもあったわけでありま
して、そういう点等を私は指摘したのでございます。
ここでも河野談話を継承すると言いつつも、「家に乗り込ん
でいって強引に連れていった」というような「狭義の強制」は
事実として否定している。
■5.安倍首相の尻尾をつかめなかった野党■
村山談話や河野談話は政府として公式に出してしまったもの
だから、それをいきなりひっくり返したら、それこそ一部マス
コミや野党が鬼の首をとったように大騒ぎし、そうなれば中韓
も首相を迎えるわけにはいかなくなったであろう。
そこで、安倍首相は、両談話を継承するとしつつも、「侵略
戦争」の定義が確立していない、とか、強制と言っても狭義の
ものではない、として、実質的に空洞化を図ったのである。
この巧妙なアプローチに、野党は安倍首相の尻尾を掴むこと
ができずに、集中攻撃も不発に終わった。
その後、下村博文官房副長官が講演の中で、個人的見解とし
つつも、河野談話について「もう少し事実関係をよく研究し、
時間をかけ客観的に科学的な知識を収集して考えるべきだ」と
述べた。
現実主義的なアプローチの中で、時間をかけて粘り強く自ら
の信念を貫くのが安倍流のようだ。今後も村山談話や河野談話
の見直しを徐々に進めることを期待したい。これも「戦後体制
からの脱却」の重要な一歩である。
■6.靖国に「行くか行かないか、は言わない」■
政権誕生から2週間も経たないうちに、安倍首相は10月8
日に中国を訪問し、翌9日には韓国を訪れた。
「靖国参拝をやめない限り、中韓は首脳会談に応じない」とい
うのが、一部マスコミの決まり文句だったが、安倍首相は「靖
国神社に参拝したか、しなかったか、するか、しないかについ
て申し上げない」という態度で押し通した。それでも中韓が訪
問を受け入れたことで、この一部マスコミの決まり文句は誤っ
ていた事が明白になった。
靖国に関しては小泉前首相が最後まで折れなかったことで、
中韓はこれ以上、靖国を外交カードにすることをあきらめたわ
けで、その機を逃さずに利用した安倍首相の政治的判断が奏功
したのである。
これを一部マスコミは「曖昧戦術」と批判するが、「曖昧」
で悪いことはない。もともと「一国の首相が戦没者の追悼をす
るのを、他国がとやかく言うこと自体がおかしい」と言うのが
日本側の主張なのであって、安倍首相が参拝について曖昧にし
たまま、中韓が首脳会談を受け入れた、ということで、日本側
が主張を押し通した形となったわけである。
■7.「曖昧」にしておくことが、双方の政治的利益に適う■
中国側は胡錦濤国家主席、呉邦国全人代委員長、温家宝総理
とトップが会談に応じた。会談後の記者会見では、冒頭から靖
国参拝に関する質問があったが、安倍首相はこう答えている。
靖国神社の参拝については、私の考えを説明した。そし
てまた、私が靖国神社に参拝したかしなかったか、するか
しないかについて申し上げない、それは外交的、政治問題
化している以上、それは申し上げることはない、というこ
とについて言及した。その上で、双方が政治的困難を克服
し、両国の健全な発展を促進するとの観点から、適切に対
処する旨述べた。私のこのような説明に対して、先方の理
解は得られたものと、このように思う。
中国側の要望も「政治的障碍を取り除いて欲しい」というこ
とで、さすがに「靖国参拝をやめよ」などとは言っていない。
「政治的障害」にさえならなければ、靖国参拝について、行っ
てもよいとも、いけないとも言わない。こちらも「曖昧戦術」
なのである。
現時点では「曖昧」にしておくことが、双方の政治的利益に
適うわけで、「一国の首相が戦没者の追悼に行くことを、他国
がとやかく言うこと自体がおかしい」という国際常識にようや
く立ち戻ったわけである。
来年の靖国参拝については、首相自身の胸算用にかかってい
るが、現実的な対応をしながらも原則を貫く安倍流に期待した
い。
■8.外交における「戦後体制の脱却」■
靖国問題以外については、中韓に対して安倍首相が明確な主
張をしている点を見落としてはならない。中国側との会談の後
の日中共同プレス発表では、こう公表されている。
日本側は、戦後60年余、一貫して平和国家として歩ん
できたこと、そして引き続き平和国家として歩み続けてい
くことを強調した。中国側は、これを積極的に評価した。
首相は記者会見において、北朝鮮問題、拉致問題、東シナ海
資源開発問題などについても、首相から考えを説き、中国側か
ら理解が示された、と述べている。従来、日中間の最大の問題
とされていた歴史問題は、「歴史を直視し、未来に向かい」、
および「日中有識者による歴史共同研究を年内に立ち上げる」
という2点だけで片付けられている。
日中関係の正常化を必要としていたのはむしろ中国側であり、
小泉前首相への靖国批判で上げた拳の下ろし所を探っていた中
国が、首相交替という機会に素早く乗ったのである。中国の
「君子豹変」に、日本の一部マスコミは2階に上がったまま梯
子をはずされた形となった。
一方、韓国との首脳会談では、「豹変」しない盧武鉉大統領
が、冒頭の40分以上も、慰安婦、歴史教科書、靖国神社に替
わる国立追悼施設など、従来通りの主張を繰り返したが、安倍
首相は一切取り合わず、そうした歴史認識を文書に表そうとし
た韓国側の要求を拒否した。かくて韓国とは共同の文書発表す
ら行われないという異例の事態となった。
いずれにせよ、首相就任直後の電撃的な中韓訪問は、その内
容においても、従来の歴史問題への謝罪から始まる戦後の対中
韓外交を完全に脱皮し、主張する外交に転換した、という点で
画期的なものであった。これは外交面における「戦後体制から
の脱却」であった。
■9.着々と進む「戦後体制の脱却」■
12月15日、改正教育基本法が成立。日教組は国会前のデ
モ行進などで組合員約1万5千人を動員した。平日の授業も放
り出しての教員のデモで、支出総額3億円というから、ただ事
ではない。
日教組がこれだけしゃかりきになるのも理由がある。従来法
の「不当な支配に服することなく」という文言を、日教組は文
部科学省や教育委員会の施策や指導に反対する根拠としてきた
のだが、今回「教育は、、、この法律及び他の法律の定めると
ころにより行われるべきものであり」と追加されて、法律に基
づく教育行政は「不当な支配」に当たらない、と明記された。
これでようやく教育が法の支配のもとに行われることとなっ
た。この当たり前のことが戦後60年も放置されてきたわけで
ある。
さらに安倍首相は12月19日夜の記者会見で、憲法改正に
ついて「歴史的な大作業だが、私の在任中に何とか成し遂げた
い」と明言した。その改正手続きを定める国民投票法案に関し
ては、来年の通常国会で成立を目指す考えを示した。
そもそも憲法改正には国民投票が必要だと現行憲法には書い
てあるが、その投票のための法律すら戦後60年間も制定され
ずに来ていたのは、どう見ても異常である。
外交、教育、防衛、そして最終的には憲法へと、占領軍が残
した「戦後体制」の脱却に、安倍政権は着々と取り組んでいる。
来年の進展に期待したい。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(401) 北風と朝日
ある朝日新聞記者が北朝鮮擁護のために でっちあげ記事を書
いたという重大疑惑。
b. JOG(339) 安倍晋三 ~ この国を守る決意
政治家は「国民の生命と財産を守る」という ことを常に忘れ
てはいけないと心に刻みました。
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 西村幸佑他『「反日マスコミ」の真実』★★、オークラ出版、H18
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「「戦後体制からの脱却」を進める安倍首相」に寄せられたおたより
ネコノミストさんより
安倍首相については、「格差容認」の経済方針だけが目に付
いて、支持できませんでした。(そもそも、公共財の提供を通
じて、富を効率的かつ公平に再分配するのが政府の役割ではな
いか。その役割を放棄して、日本経済が良くなるものか、と)
しかし、本号を通じて、外交についてはかつての過ちを覆す
に十分の辣腕を揮っていることを知りました。脱戦後体制につ
いては、頑張ってもらいたいと思います。
それにしても、マスコミは安倍首相の快挙を、全く伝えよう
としていませんね。反論することすら、焦点を当てる結果にな
ることを、彼らなりに学んでいるのでしょうか・・・
■ 編集長・伊勢雅臣より
マスコミは「支持率急降下」などと囃し立てていますが、登
場直後の70%が異常で、下がっても50%近くというのは、
退陣前の小泉内閣と同水準です。ちなみに小泉内閣の在任中の
平均支持率は50%で、わずか8ヶ月で退陣した細川内閣に次
いで戦後第2位です。でも、安倍首相には国民の人気取りなど
に気をとられず、国家百年の計のもと、「戦後体制からの脱却」
を着々と進めていただきたいと思います。
この記事へのコメント