No.1333 皇帝独裁に苦しむ中国人民
人為的大洪水、頭金を払ってもマンションを受け取れない消費者、地下道で寝泊まりする農民工、、、
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■【第一次大戦】日本帝国海軍、地中海に奮戦す
第一次大戦、同盟国イギリスの要請に応え、日本の駆逐艦隊は地中海でドイツ軍潜水艇と戦った。
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■1.日本からの水産物を輸入禁止とした「皇帝」の独裁ぶり
8月26日付朝刊で、朝日新聞は「中国の禁輸 筋が通らぬ威圧やめよ」と、東京電力福島第一原発の処理水放出を理由に、中国政府が日本からの水産物輸入を全面的に止めると発表した事を批判しています。こういう論説を読むと、「ああ朝日も日本の新聞だったのだな」と、すこし安心します。
中国で発行された原子力専門書「中国核能年鑑」によると、浙江省の秦山原発は2021年に218兆ベクレルと、日本の処理水の海洋放出計画が設ける年間上限「22兆ベクレル」の約10倍に当たるトリチウムを放出しています[産経]。
中国政府自身が公表したこの数字を使って、今後は国際社会に向けて「現在のトリチウム放出量は中国・秦山原発の8%です」などと発表したら良いと思います。いずれにせよ、まともな国で中国政府の反対に同調する国はなく、中国の非論理的な対日批判は常軌を逸しています。
おそらく「裸の王様」となった習近平の独断でやっていることで、取り巻き連中にはそんな「皇帝の独裁」を止める人もいなくなったのではと想像しています。そして、なによりこの独裁者には、自国の人民の苦難もまったく眼中にないことが分かります。
日本側の報道では、国内の困惑ぶりのみが報道されていますが、同様に中国内でも安全安心な日本の水産物がなくなって困る業者、レストラン、消費者がたくさんいるでしょうから。
ちょうど良い機会ですから、この際、日本国民が皆で魚を食べて、水産業者を守り、それを通じて食料自給率を上げる方向で努力しましょう。それが日本の経済的安全保障にもつながるのです。
■2.習近平肝いりの「鬼城(ゴーストタウン)」を護るために、100万人の都市が水没させられた
習近平皇帝の中国人民無視は、最近の北京の洪水にも見てとれます。北京の南西60キロほどに位置する啄州(たくしゅう、口偏のかわりにさんずい)では水深6メートルもの洪水が町を飲み込み、3階建て以上の建物や交通信号などがやっと水面からのぞくほかは、街並みが水の底に沈んでしまいました。
河北省全体では死者29人、行方不明者26人、被災者は388万人と公式発表されていますが、実際の被害はこれより1桁か2桁多いのでは、と言われています。
この被害も、実は習近平の人民無視の人災だという声が出ています。中国の洪水対策は、あらかじめ低地を「遊水地」と決めておき、洪水になりそうになったら、そこに水を流す、というものです。今回大洪水となった啄州は北京を守るための遊水池だったのです。人口百万の都市を、北京を守るための遊水地にしている、という、なんとも豪快な対策です。
さらに凄い話があります。実は啄州の上流に、華北最大の遊水池「白洋淀」がありました。ここには広大な湖沼群があり、人があまり住んでいない低湿地帯です。ここを遊水池として活用すれば、啄州が洪水に襲われることもなかったはずですが、不幸なことに習近平がこの地に目をつけて、人口2000万人規模のスマート・エコシティー「雄安新区」の建設を始めたのです。
専門家たちは「必ず大水害が起きる場所に都市をつくるべきではない」と反対しましたが、習近平としては、深センを大都市に育てたトウ小平を超えようと、「習近平が自ら発案、計画、指導」して巨大プロジェクトを始めました。すでに5000億元(約10兆円)を投じて、多くの高層ビルや巨大なスタジアムが作られています。
しかし、企業もわざわざ北京から100キロも離れた僻地に移転するメリットはなく、人もあまり住んでいない「鬼城(ゴーストタウン)」となって、建設工事もほとんど止まっています。習近平のご機嫌を損ねないよう、このゴーストタウンを護るために、100万人が住む啄州が身代わりとなって、水没させられたのです。
■3.人口14億の中国で34億人分の住宅を作ってしまったバブル経済
「鬼城(ゴーストタウン)」は「雄安新区」だけではありません。中国のあちこちの大都市には、超高層のタワーマンションが何本も建ち並んでいますが、それらがみな建築途中で放棄されている光景をよく見ます。なぜこんな事になっているのでしょうか?
trend watcher 「城化する高層アパート」
これは中国の住宅バブルが実体的には破裂しているのに、中国政府を護るために、その被害を一般消費者や労働者に押しつけているからです。ちょうど、北京や雄安新区を洪水から護るために、啄州の100万の住民が犠牲にされたように。
海外の資本市場では、中国の不動産バブルの実態が垣間見えるようになりました。不動産大手の中国恒大集団(エバーグランデ)は8月17日、米ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条(日本の民事再生法に相当)の適用(破産)を申請しました。
恒大は2021年にドル建て債の債務支払い不履行(デフォルト)に陥り、負債総額は推定3千億ドル超(約43兆5千億円)に達し、過去2年間の純損失が計5819億元(約11兆2千億円)だったと発表しています。現在、日本で最大の赤字を出しているのは楽天グループで、負債が約4兆円、昨年の赤字が約3700億円ですから、さすがに中国は1桁大きいですね。
他の不動産業者も似たような状況のようです。いまや中国全体で34億人分の住宅ができていると言われています。中国の人口は約14億人ですから、20億人分ものムダな住宅を作ってしまったのです。こんな状態で、不動産業者が巨額の損失を出しながらも、まだ生きながらえているのが不思議ですが、そこに中国の独裁政権による統制経済の本質が窺えるのです。
■4.34億人分の住宅を作ってしまったバブルの仕組み
なぜ34億人分もの住宅ができあがってしまったのか。そのバブルの仕組みを見ておきましょう。
中国の土地はすべて国有ですが、地方政府が土地の使用権を販売します。基本的に革命時に地主たちから取り上げて国有化した土地で、元手はただですので、地方政府としては棚ぼたでお金が入ります。
不動産業者は使用権を購入して、そこに住宅をつくって消費者に売ります。一方、消費者は銀行にローンを組んでもらって、住宅を買います。これが実際に住むための住宅を買っているうちは正常なプロセスですが、住んでいる家はもうあるのに、値上がりを見越して、もう一軒買おうとするとバブルが始まります。
2000万円の家で、1年後には2500万円になるという見込みがあれば、投資目的でそれを買おうという人々がたくさん現れます。とすると、投資目的の見かけの需要が膨らんで、実際に価格も2500万円に上がったりするのです。
こうして実需を超えて、投資目的で見かけの需要が膨らみ、それで価格が上がり、その値上がりがさらに投資を呼ぶ、という膨張過程がバブルの正体です。このバブルは銀行の資金供給が続く限り、そして、人々が住宅の値上がりはまだまだ続く、と考えている限りは続きます。
日本のバブルを崩壊させたのは、財務省による不動産向け融資の総量規制や、日本銀行の金利(公定歩合)引き上げなどで、資金供給を絞ったことでした。
■5.「国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます」
日本のバブルは財務省や日本銀行がストップをかけましたが、中国ではどうでしょうか? 元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏は次のように断言します。
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しかし不動産バブルを維持することは可能なのです。銀行のほうで不動産開発業者にずっとお金を貸し続ければいい。中国では銀行は国有です。だから国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます。[高橋他、p52]
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もう絶対に売れない「不良債権」となっても、それは国有銀行と、さらに銀行を監督する中国政府が「いつか売れるはず」と言い張れば、不良債権ではなくなってしまいます。日本の銀行がこんなことをしたら、背任罪で刑事罰を受けます。こういう事を平気でできるところが、中国の特殊性です。
こうして34億人分ものムダな住宅が積み上がっても、不動産企業は知らんぷりをして、銀行から金を借り続けて、経営を続けていけるのです。恒大のように2年間で約11兆2千億円もの赤字を出していても。
■6.見捨てられている消費者、労働者
中国政府、国有銀行、不動産業者はマネーゲームを続けていけますが、実態経済の方ではさすがにタワーマンションの建設が続けられなくなったり、新規案件がなくなったりします。国家統計局の発表では去年1年間で中国全国の住宅の販売面積は24.3%減、売上総額は26.7%減と激減しています。中国の統計は何割か粉飾されているので、実態はもっと悲惨でしょう。
また、消費者にとって不幸な点は、中国のマンションは完成前に購入し、頭金を支払いをします。したがって、不動産業者の方で資金繰りが苦しくなって、建設が止まってしまったら、代金は払っているのに、物件は完成しない、ということになります。
恒大集団のマンション販売だけでも、すでに頭金を支払ったのに入居できない人が160万人。中国全体では、1000万人以上だろうと言われています[宮崎、p155]。テレビでも消費者がデモをしている光景が映し出されていますが、これが理由です。
しかもマンション購入のためのローンなどで、中国国民は借金漬けになっています。現在の中国の家計の負債率(収入に対する債務)は137.9%にも達していると報じられています。日本の家庭で言えば、近年の平均世帯収入が560万円ほどですから、平均的な家庭で700万円ほどの借金があることになります。
ただし日本の場合は住宅ローンで借金があっても、購入したマンションとそれに付帯した土地を財産として持っているので相殺できます。しかし、中国の場合は、マンションは未完成で住めず、しかも土地は利用権のみでは、実体的な価値はありません。
未完成の建物、利用権のみの土地という「絵に描いた餅」を700万円も借金して購入した消費者は、マネーゲームに騙された被害者と言えます。
建設工事も当然、激減しています。農村部の若者たちが仕事がないため、都会に出て建築現場などで働いている「農民工」が2億5千万人ほどいますが、不動産開発の仕事も減って浮浪者化しています。こんな報告があります。
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例えば、広東省の深センでも広州でも地下道路やトンネルなどは、夜になると寝に来た農民工たちで満杯になっている。遅く行ったらもう寝る場所も取れない。[高橋他、p25]
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こうしてみると、政府、銀行、不動産業者などに務める上流階級はマネーゲームで生活を守られていますが、その一方、消費者や労働者などの下流階級は搾取されていることが分かります。北京や雄安新区を護るために、啄州の住民100万人が犠牲となったのと、まさしく同じ構造なのです。ここまでの階級搾取を見ると、中華「人民共和国」という国名はもはやブラックジョークのようです。
■7.日本の何倍も速い出生数の低下
しかし、中国人民の不幸を考えれば、ブラックジョークなどと揶揄することはできません。中国社会のお先真っ暗ぶりは、我が国よりも格段にひどい少子化に現れています。
1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な人数を示す「合計特殊出生率」で、中国は2022年に1.09に下がったと報じられました。日本の1.30(2021年)よりも、一段と低いのです。人口を維持するためには、1人の女性が2人強の子どもを生まなければなりません。それが1人強では人口は急速に減少していきます。
人口過剰に苦しんでいた中国は、数十年にわたって「一人っ子政策」をとってきました。それでも2010年までの出生数は毎年2000万人以上でした。それが2022年には956万人と半減以下になってしまったのです。日本では出生数が半分に落ちるまでに40年かかっていますが、中国はわずか12年で半減になってしまったのです。
この間、一人っ子政策を廃止し、第二子容認、さらに第三子容認まで行いましたが、ほとんど効果はありませんでした。この急激な少子化の進行は、青年たちの間で「3つのしない」、すなわち「恋愛しない、結婚しない、子供をつくらない」が広まったからです。
それもそのはず。中国政府が発表した2022年4月の統計では、16歳から24歳までの若年層の失業率は20%を超えています。政府統計で20%以上なら、実際には30%以上になっているはず、と言われています[高橋他、p80]。仕事もなく、住宅も買えなかったら、「3つのしない」で生きていくしかありません。
■8.我々の子孫に中国人民の苦難を体験させたくなかったら
こうした中国の人民の不幸な有様を見ると、「知らす」と「領(うしは)く」という政治姿勢の違いが実感できます。[JOG(736)]
「知らす」とは民の喜びや悲しみを知り、その安寧を祈る心です。大きな災害が起きたときに、天皇皇后両陛下が被災者たちのお見舞いをされていますが、それが「知らす」政治の象徴です。そして、その「知らす」御心を実現するために、行政、自衛隊員、消防隊員たちが被災者救援に取り組みます。
一方、「領(うしは)く」とは、皇帝が人民を牛馬のような財産とみなして、搾取する政治です。中国の皇帝から見れば、水害で100万人の都市が水没しても、14億の家畜のごく一部が被害を受けただけの話に過ぎません。
現在の我が国は、中国の覇権拡張から独立をいかに護るか、という瀬戸際にあります。我々の子孫を、人為的な洪水に曝された啄州の人々、前金を払ったのに家を受け取れない消費者、仕事もなく地下道路やトンネルで夜を過ごす農民工のように、「領(うしは)く」政治の被害者にしたくなかったら、今が踏ん張り時なのです。
(文責 伊勢雅臣)
■おたより
■中国の歴史は繰り返す(Naokiさん)
新聞やTVなどのメディア(いわゆるオールドメディア)は、相変わらず中国の可能性、良い面しか報道していないように感じます。
しかし、書籍やネット動画などの情報を伊勢様のように丁寧に紐解けば、旧メディアが知らせない面も把握できます。本当のところはどうなのかという健全な疑問を常に持ち続ける重要性を感じました。
中国(シナ)の歴史を見れば、独裁者が人民を虐げ、反乱がおこり王朝が替わる…が繰り返されてきました。内政の失敗に対する人民の不満のはけ口を求め、「外敵」をこしらえるパターンも同様です。日本の水産物輸入禁止措置もその一環かもしれません。
この厄介な隣人とどう接していくのか?今こそ、日本・日本人の軸をしっかりと打ち立て直す時期だと強く思います。そのために、事実と歴史から学び続けます。
■伊勢雅臣より
中国の歴史は皇帝独裁と、戦国時代が互いに繰り返されます。現在の習近平独裁もそろそろ終わりを迎え、これから戦国時代に入っていく、ということでしょう。周辺国にとってはまことに迷惑な話ですが。
■リンク■
・JOG(1245) 中国共産党「大量虐殺」の100年 ~ 石平氏著『中国共産党 暗黒の百年史』から
毛沢東による「革命同志」7万人粛清から始まった「大量虐殺」の歴史
http://jog-memo.seesaa.net/article/202112article_1.html
・JOG(1229) ウイグル人の住む地獄
「中国共産党の狡猾さ、したたかさを予想できなかった祖先を恨む」というウイグル人の思いを我々の子孫にさせないために。
http://jog-memo.seesaa.net/article/202108article_4.html
・JOG(736) 井上毅 ~ 有徳国家をめざして(下)
井上毅が発見した我が国の国家成立の原理は、また教育の淵源をなすものであった。
http://jog-memo.seesaa.net/article/201202article_7.html
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
・朝日新聞R050826「(社説)中国の禁輸 筋が通らぬ威圧やめよ」
https://www.asahi.com/articles/DA3S15725562.html
・産経新聞R050808「中国原発、処理水上限超え トリチウム、7割の地点で 公式資料で判明」
https://www.sankei.com/article/20230808-Y6UQ6FC3ZFLULOXUH37Q5D46IM/
・高橋洋一、石平『中国経済崩壊宣言!』★★★、ビジネス社、R05
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4828425446/japanontheg01-22/
・福島香織「北京を守るのに地方100万人を犠牲に、大洪水で露見した中国の非人道的な治水 習近平肝煎り「スマートシティー」プロジェクトも失敗」、JBpress、R050818
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76576
・宮崎正弘『中国経済はもう死んでいる』★★、徳間書店、R04
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4198654247/japanontheg01-22/
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