No.1446 北朝鮮 ~ 飢餓の中でミサイルを撃ちまくる理由



 北朝鮮は国民を飢餓にさらしてまで、なぜミサイル乱射を続けるのか。

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【コメント】
・江戸時代から戦前に至るまでの教育の積み重ねがあり、戦後のGHQによる統治ののち、現代に至っているのを軽視して、「ゆとり教育」や「個性尊重」を進めるのは愚かしいとしか思えません。

・無理に子供を1人で寝かせず、両親や祖父母と添い寝するのが子供にとって安心感がありますね。欧米式の1人で寝かせるのもやはり抵抗があり出来ません。
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■1.今年だけで40発以上のミサイルを乱射している北朝鮮

 11月22日、北朝鮮が衛星を打ち上げると称して、ミサイルを発射しました。今年になってから、短距離ミサイルなども含めれば、すでに40発以上になります。昨年は1年間で68発でした。一昨年は4発、その前は8発でしたので、昨年から急激に増やしたことになります。

 昨年12月、拉致問題がテーマの国際セミナーで、基調講演をした金聖○(キンソンミン・○は王偏に「文」)・自由北韓放送代表は、次のように語りました。
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 金正恩は今年だけで、大陸間弾道ミサイルや中短距離ミサイル33発を発射しましたが、これにかかった費用は8千億ウォンだということです。このカネがあれば北朝鮮の全住民にワクチンを打つことができ、今年一年間の食糧不足分を補うだけの食料を買うこともできるということなので、本当に『狂った金正恩』に『狂った北朝鮮』と言わざるを得ません。[西岡、881]
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 西岡力・モラロジー研究所教授の最新著『狂った隣国 金正恩・北朝鮮の真実』によると、北朝鮮はすでに各地で餓死者が続出し、軍の兵士ですら栄養失調が蔓延していると言います。

 そんな状況の中で、「北朝鮮の全住民に一年分の食糧不足を補う」こともできる費用を使って、ミサイルを撃ち続けている理由は何なのでしょうか? 昨年から激増というと、ロシアのウクライナ侵略と関連がありそうです。その答えを探る前に、まず飢餓の実態を見ておきましょう。

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■2.市場の棚は空っぽ、道ばたには死体、、」

 西岡氏はこう語り始めます。
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 1990年代後半、3百万人以上の餓死者が出た「苦難の行軍」時期にも政権を支える党、政府、軍、治安機関幹部への食糧供給は支障なく行われていた。それに比べて今回の食糧危機は、政権の崩壊につながりかねない、より深刻なものとなっている。[西岡、599]
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 2020年に入ってからコロナにより、中国との国境が封鎖され、中国からの穀物輸入だけでなく、食料生産に必要な肥料や機械の輸入も止まってしまいました。国境はフェンスで強化され、警備隊は越境しようとする人を射殺するよう命ぜられているようです。そのため、闇市場で売る食物を密輸入することも不可能になりました。

 北朝鮮北部の市場で商いをしている女性ミョンスクさんは、地元の市場にはかつて商品が並び、その四分の三近くが中国からの輸入品だったが、「いまは空っぽ」だと語りました。

 中国には繰り返し緊急食糧支援を要請しましたが、無償支援は断られました。有償での輸入についても、中国も2022年秋の収穫が不作だったこともあり、23年3月になって、コメ需給の統計が揃ってから、どのくらい北朝鮮に回せるか通報すると言われましたが、結局、その後も支援は来ていません。

 北朝鮮につながる脱北者は西岡氏に「(伊勢注:2023年1月から7月までに)各市・郡で数千人が死んでいて、道ばたの死体をかたづけるため労働鍛錬隊員(比較的軽い犯罪を犯し強制労働させられている囚人)が動員されている」と、語ったそうです。

 また安全員や保衛員と呼ばれる治安機関員への配給も次第に乏しくなり、彼らも家族を食べさせなければならないので、市場に行って商人に難癖をつけて商品を没収し、自分の懐に入れる行為を頻繁に行うようになりました。

 それに対して、もともと配給がなく、必死の商売で食べている住民らが治安機関員に復讐する事件が頻発しています。そのために、2020年11月頃、金正恩は「集団的に抵抗する無秩序に対しては、武器を使用して良い」という緊急命令を下しました。

 平壌、南浦(ナムポ)、平城、清津などでコロナウイルス防疫を理由にして都市封鎖を行いましたが、実は民衆の反乱事件の兆候が爆発的に増えているために封鎖されたと言います。2023年になっても朝起きると道に安全員や保衛員が大けがをするか、殺されて倒れているという事件が頻発し、彼らも夜9時以降は外出を控えていると伝えられています。


■3.戦時のための備蓄食料も軍が兵士に放出

 1990年代前半までは食料配給制度が機能していましたが、この時の飢饉で制度が崩壊し、配給だけに食料を頼っていた人々がおおぜい餓死しました。以後も食糧配給制度は再建されず、人々は自分で商売をして食料を市場で買い求めたり、山に入って焼き畑農業をして食いつないできました。中国からの輸入が止まって、その市場も「空っぽ」になってしまったわけです。

 それでも軍将校、保衛員、安全員などの公務員は食糧配給が続いていましたが、ついに家族への配給が2022年秋に、本人への配給も23年6月に止まってしまいました。兵士も少量の食事しか食べられず、栄養失調が蔓延しています。

 2021年6月には金正恩は、「軍の各部隊が戦時に備えて備蓄している門外不出の戦争備蓄食糧を人民に配れ」との命令を出しましたが、実際には何も配られませんでした。

 軍内の深刻な食糧不足と兵士らの栄養失調続出のため、人民軍は金正恩に隠して、すでに戦争備蓄食糧を兵士らのために放出していたのです。それを知った金正恩は怒って、軍の責任者である政治局常務委員の李炳哲・中央軍事委員会副委員長(人民軍元帥)と、政治局委員の朴正天・総参謀長(人民軍元帥)を降格処分にしました。

 これに対する軍の不満が抑えきれないほどに高まりました。これは放置できないと判断した金正恩は一転して、軍のご機嫌取りをしました。

 全軍の指揮官と政治委員、大佐、中佐レベルまで、約6千人を平壌に集め、7月24日から27日まで「講習会」が開かれました。27日夜には大宴会、28日にはコンサートが開催されました。金正恩は連日出席し、参加者全員と記念撮影をしました。こんな「講習会」はこれまで一度もありませんでした。


■4.中朝北の共同謀議

 こういう中で起きたのが、ロシアによるウクライナ侵攻でした。西岡氏の北朝鮮内部から掴んだ情報と、ロシアからの内部情報は一致して次のような謀議が中露朝の間であった、と指摘されています。

 ロシアが開戦前の計画通り一週間で戦争に勝利すれば、中国が台湾との戦争に突入し、北朝鮮人民軍は朝鮮半島で米軍を攪乱する局地戦を行うことが合意されていたというのです。[西岡、936]

 しかし、ウクライナが予想以上に頑強に抵抗し、西側諸国も積極的、かつ迅速にウクライナ支援をしました。ロシアの侵攻が手間取ったことによって、中国は台湾侵攻の時期とシナリオを見直さなければならなくなり、北朝鮮も今、手出しをしたら自分だけやられると考えたようです。ウクライナの果敢な抵抗が、極東における戦乱を防いでくれたのです。


■5.北朝鮮のミサイル乱発は、ロシアの援助との引き換え

 2022年3月中旬、ショイグ国防相が中国を訪問し、中国軍関係者にミサイルなどの提供を求めて拒否されました。中国としてもロシア軍が中国製ミサイルを使っていることが露見したら、国際社会で大きな非難を浴びることを恐れたのでしょう。

 ショイグ国防相は北京で朝鮮人民軍代表団とも会談しました。そして北朝鮮に特殊部隊参戦とミサイル提供を要請しましたが、北朝鮮はそれを断り、その代わり、ミサイル発射実験を続けて米国を牽制すると伝えました。

 2022年10月1日にも、ハバロフスクで北朝鮮人民軍とロシア国防省高官の秘密会談が開かれました。ロシア側は米国のウクライナへの関与を分散させるため、朝鮮半島で軍事緊張を最高度に高めることと、北朝鮮が保有する砲弾の提供などを要請し、見返りとして年間10万トンの精製された石油と、ウクライナ戦争終了後に最新鋭スホイ戦闘機を提供すると提案しました。

 金正恩は石油と最新戦闘機が欲しいので、この提案を歓迎し、朝鮮半島での局地戦はできないが、ミサイル乱射など、それ以外の方法で軍事緊張を高めると約束しました。11月7日、一日に30発近いミサイルを乱射した背景には、この密約がありました。

 韓国側海域に撃ち込まれたミサイルの残骸を、韓国軍が回収して調査した結果、ソ連が1960年代に開発し、80年代に北朝鮮に輸出された「くず鉄ミサイル」(韓国・中央日報)でした。くず鉄ミサイルを撃ち、石油をもらうという北朝鮮の巧妙な取引でした。

 また密約に従って、すでにかなりの量の石油が、ロシアのナホトカ港から船で北朝鮮の羅津港に運び込まれていると見られています。北朝鮮はこれまで燃料不足で満足に空軍演習をすることができませんでしたが、ここにきて大量の戦闘機を飛ばせるのは、ロシアから提供されたジェット燃料のおかげです。

 北朝鮮が提供することになった砲弾は、1960年代から80年代まで、ソ連製をモデルに生産した220ミリと120ミリ砲弾です。地下倉庫に長期間保管されていたため、厳密な検査をし、不発ではないと判断されたものだけを密輸していましたが、不発や射程未到達が多かったといいます。

 2023年7月27日の北朝鮮の朝鮮戦争「戦勝」70周年記念閲兵式にもロシアのショイグ国防相が列席し、金正恩や朝鮮軍最高幹部らと相次いで面会しました。ショイグ国防相はウクライナ戦争への朝鮮人民軍特殊部隊10万人の派兵を求めたといいます。

 北朝鮮側はSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を搭載できる原子力潜水艦か、その建造技術、それに小麦粉を求めたと伝えられています。会談の結果がどうなったかは、まだ確実な情報がありません。


■6.韓国や日本に対する公然たる核脅迫

 ただ、北朝鮮のミサイル乱発は「くず鉄ミサイル」の「こけおどし」だけではありません。朝鮮中央通信は2022年10月10日「金正恩総書記が朝鮮人民軍戦術核運用部隊の軍事訓練を指導」という記事を掲載しました。実際に9月25日から10月9日まで7回にわたって弾道ミサイルを発射しています。

 ここで、西岡氏は「戦術核運用部隊の軍事訓練」という用語の重要性を指摘しています。「戦術核」とは韓国、日本、グアムを狙う小型核兵器です。

 戦術核運用部隊とは韓国と日本、グアムなどを狙った核攻撃を行う部隊であり、ここが「訓練」を行ったというのは、核ミサイルが完成して軍に引き渡され、実戦配備されたという事を意味しています。まだ開発段階なら国防科学院による「試射」と呼びます。

 したがって「戦術核運用部隊の軍事訓練」とは、韓国や日本に対する公然たる核脅迫を意味しています。これが単なるはったりではないことを、日本政府も認めています。この弾道ミサイル発射直後の10月13日、浜田靖一防衛大臣はこう答弁しています。

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 北朝鮮は少なくとも、『ノドン』『スカッドER』といった、わが国を射程におさめる弾道ミサイルについては、これらに核兵器を搭載して、攻撃するために必要な核兵器の小型化・弾頭化などを、すでに実現しているものとみられます。
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■7.それでも「あくまで対話を」と説く朝日新聞

 韓国や米国もこの見方を共有している模様で、北朝鮮の核攻撃を想定しての軍事演習が活発に行われるようになりました。まず、10月22日、米国防総省で、北朝鮮の核使用を想定した米韓合同の「核報復」机上演習が実施されました。同日、日本海では日米韓のイージス艦が弾道ミサイル対処共同訓練を行いました。

 年が明けて、3月13日から23日まで、米韓軍が合同軍事演習「フリーダム・シールド(自由の盾)」を実施しました。5年ぶりの大規模な野外機動訓練です。

 4月24日からは韓国・尹大統領が米国を訪問し、バイデン大統領と会談、北朝鮮の核脅威に対する米韓同盟の抑止力を強化することをうたった「ワシントン宣言」を発表しました。そこで戦略核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を韓国に派遣することが決定され、7月には実行されました。

 尹大統領はこの時の共同記者会見で「私たち二人の首脳は北朝鮮の核ミサイルの脅威に直面し、相手の善意に期待する偽物の平和ではなく、圧倒的な力の優位を通じた平和を達成するため、両国間の拡大抑止を画期的に強化することにした」と述べました。バイデン大統領も、北朝鮮が米国や同盟国を核攻撃すれば、「(北朝鮮の)政権は終焉する」と語りました。

 日米韓の政府発言や共同訓練を見れば、金正恩がロシアに対して行った「ミサイル乱射などで軍事緊張を高める」との約束は、着実に実行されつつある事が分かります。

 こうした北朝鮮のロシアと連携した脅迫に対して、朝日新聞は「北朝鮮ミサイル 自国民を苦しめる愚行」と題した社説でこう語っています。
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懸念されるのは日米韓の議論が抑止の強化に偏重し、対話を再開する意欲が伝わっていないことである。
 北朝鮮の行動を変えるためには、一定の影響力を持つ中国の協力が不可欠だ。日米韓とも中国とは困難な課題を抱えているが、対立を抑え、連携して北朝鮮を対話のテーブルに戻す外交力が求められる。[朝日]
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 北朝鮮のミサイル乱発は「自国民を苦しめる愚行」というだけではなく、我々日本国民が核で脅迫されているという危機感がまったく感じられません。北朝鮮は「愚か」なのではなく、西岡氏の著書のタイトルが示すように「狂った隣国」なのです。

 我々のすぐ隣で、狂人が飢え死にしつつある妻子を家に閉じ込めたまま、周囲に向かってピストルの威嚇射撃をしている事態に対して、「あくまで対話を」と主張しているのです。ことここに至って、自分の家族を守るための防衛努力を軽視する「空想的平和主義」こそ、「自国民(日本国民)を苦しめる愚行」ではないでしょうか。
(文責 伊勢雅臣)


■おたより

■根拠のない「他国が日本に侵攻するなどあり得ない」という安心感を払拭すべし(清田直紀さん)

中学社会科を担当する教師として、また「一日本人」として、歴史や社会の見方・考え方を教えていただいています。

今回も「なぜ北朝鮮はミサイルを飛ばし続けるのか?」という問いが「なるほど!そういう理由があったからか…」と納得できました。

戦後の日本は、ある意味でアメリカの属国としての平和(依存的な…)を享受してきました。その結果、安全保障に対する危機感が欠如しており、根拠のない「他国が日本に侵攻するなどあり得ない」という安心感が蔓延しています。

しかし、歴史を紐解けば、近現代史は戦争の歴史と言ってよく、残念ながらそういった事実は誰もが認めざるを得ないと思います。

この前提をきちんと受け止めた上で、日本の在り方や真の世界平和構築に向けた現実主義的な言動が必要だと強く感じます。

自分の立場で何ができるか?を考え、行動していきます。


■伊勢雅臣より

 歴史を直視すれば、「近現代史は戦争の歴史」という真実が見えてきますね。その上で、どう平和を守るのか、考えるべきです。


■リンク■

・JOG(1004) 北朝鮮のミサイルは防衛費の2%で抑止できる
 独裁者をピンポイントで狙える巡航ミサイルを活用すれば、抑止力を発揮できる。
http://jog-memo.seesaa.net/article/201705article_3.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

・朝日新聞「(社説)北朝鮮ミサイル 自国民を苦しめる愚行」R050221
https://www.asahi.com/articles/DA3S15561449.html

・西岡力『狂った隣国ー金正恩・北朝鮮の真実ー』★★★、ワック、R05
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4898318843/japanontheg01-22/

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