No.1416 日本を救う代替肉
大豆などから作る代替肉は、健康的で環境に優しいだけでなく、日本の食の伝統にも合致し、食の安全保障に寄与する。
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■■■ 伊勢雅臣・解説動画「徹底検証 歴史教科書比較」■■■
第1巻 維新の幕開け編
「維新の幕開け」 編では、日本近代化のきっかけとも言える、黒船来航で我々の先人たちはどのような試練に立ち向かったのか?清国の侵略に対して、いかにしてアジアの平和を保とうとしたのか?
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■1.有事での食糧危機
花子: 先生、最近は食品の値上がりが凄いですね。よく母に頼まれてスーパーに買い物に行きますけど、行く度に値上がりしていて、母も家計のやりくりに苦労しています。たとえば牛肉は、去年の初めまではキロ700円くらいだったのが、この春には千円以上になっています。
伊勢: 米価の高止まりがさんざん新聞やテレビのニュースになっていて、肉の方はあまり報道されていないけど、随分高くなったんだね。日本の食糧自給率はカロリーベースでは38%(2023年)と、世界の先進国の中では最低水準で、その犯人の一つが畜産物だ。畜産物の自給率は55%あるんだけど、その大半が輸入飼料を使っていて、国産飼料だけで育てている分は16%に過ぎない。
花子: それでは、台湾有事などが起こったら、大変ですね。
伊勢: そう、ほとんどの輸入は台湾近海のシーレーンを通っているからね。それだけでなく、輸出国でコロナ禍のような事態が起こったら、すぐに輸出できなくなるし、また、日本の大地震で港湾設備が津波で破壊されたら、何ヶ月も輸入がストップしてしまう。グローバルな自由貿易に依存して、外国から安い食品をいくらでも輸入すれば良い、という時代ではなくなったんだね。
花子: でも、今の日本に、その脅威をなんとかする方法はあるのでしょうか? この狭い日本列島に、1億2千万人も住んでいて。
■2.各種の代替肉商品が市場に出回っている
伊勢: そこは、いろいろな人や企業が様々な努力をしている。今回は、肉の分野を考えてみよう。現在は大豆などの作物から代替肉を作る技術が発達し、実際に販売している。アメリカの「Impossible Foods」や「Beyond Meat」、ヨーロッパの「LikeMeat」など、海外の主要ブランドが日本市場に積極的に進出し、製品を展開している。
ただ、日本メーカーも負けじと反撃している。有名なメーカーの商品だけ並べても、次のような商品がある。
・マルコメ株式会社: 「ダイズラボシリーズ 大豆のお肉」で、代替肉のミンチ、スライス、ブロックなど。
・大塚食品株式会社: 「ゼロミートシリーズ」でハンバーグやソーセージなど。
・カゴメ株式会社: 「プラントベースシリーズ」で代替肉を使用したパスタソースなど。
・日本ハム株式会社: 「ナチュミート」ブランドでハムやソーセージ。
・イオントップバリュ: 「Vegetive(ベジティブ)」ブランドでハンバーグや唐揚げ、ハムカツなど。
花子: へえー、スーパーでは時々見かけますが、ずいぶん、いろいろな企業がすでに実際の商品を発売しているんですね。
■3.価格と味は通常肉に近づいている
花子: 代替肉の値段や味はどうなんでしょう? 通常肉と競合できるレベルなんですか?
伊勢: 価格はまだ高めだね。たとえば、日本ハムの「ナチュミート お肉を使用しないハンバーグ」は150gで345円だけど、同社の通常肉による「豊潤デミグラスハンバーグ」は同じ重量で200円ちょっとだ。
花子: その価格差だと、そう気軽には手を出せませんね。
伊勢: そうだね。ただ、こういう新製品は市場が広がると、一気に生産量が増えて、価格も急速に下がっていく。一方で、通常肉の方は、円安や各種の供給リスクで、値段が上がっていく傾向だ。
花子: 味の方はどうでしょうか?
伊勢: Amazonの評価を見てみると、たとえば、マルコメの「ダイズラボ 大豆のお肉レトルト ミンチ」はすでに、1500件以上の評価があって、総合点は5点満点中4点となっている。その中で、「味」に関するコメントでは肯定的95件、否定的19件だから、かなり良い評価を受けているね。味を近づける技術開発も急速に進んでいるので、今後もさらに良くなっていくのではないかな?
■4.栄養面では、非常に健康的
花子: 栄養面ではどうなんでしょうか? 大豆など植物から作られているというと、健康的な印象を持ちますけど。
伊勢: 栄養の面では、代替肉の方が圧倒的に健康的だね。栄養成分を比較すると、こう言われている。
・食物繊維が豊富: 通常肉には含まれない食物繊維が豊富で、腸内環境を整える効果がある。
・低脂質・低カロリー: 代替肉は通常肉に比べて脂質が少なく、カロリーも低めであるため、心血管疾患や肥満リスクを軽減する可能性がある。
・コレステロールがゼロ: 代替肉は植物性由来のためコレステロールを含まず、心臓病予防に役立つ可能性がある。
ただ、ビタミンB12やヘム鉄など、動物性食品特有の栄養素は含まないので、これらの不足は別途、補う必要がある。
江戸時代以前の日本人はほとんど肉食をせず、タンパク質は豆腐、味噌、納豆などの大豆製品でとっていたから、代替肉を食べることは一種の先祖返りだね。江戸時代の人々は、一日に数十キロも平気で歩き、平均寿命も当時の西洋よりも長かったというデータもあるから、健康には良いんじゃないかな。
花子: そういう健康的な食品が、早く安価になって、みんなが食べられるようになったら良いですね。
■5.環境にははるかに優しい
伊勢: 代替肉は土地や水の利用、水質汚染、生態系への影響でも圧倒的に通常肉よりも、環境に優しい。世界的には次のように言われている。
・土地利用
通常肉: 動物飼育に広大な土地が必要。世界では農業用地の約75%が動物生産に使用されている
代替肉: 79%削減(必要な土地は牛肉の約5%以下)
・水消費量
通常肉: 飼育や飼料栽培に大量の水を使用
代替肉: 95%削減
・水質汚染
通常肉: 動物の糞尿や飼料などによる水質汚染
代替肉: 93%削減
・生態系への影響
通常肉: 森林伐採や生息地喪失を促進し、生物多様性を脅かす
代替肉: 森林破壊や生物多様性への影響が少ない
花子: 土地が少なくてよいとか、水質汚染が少ないというのは、狭い日本列島にはぴったりですね。
伊勢: 世界的に見ても水不足が問題となっているから、水使用量を95%も節約できるのは大きいね。
■6.大豆栽培から代替肉生産までの地産地消
伊勢: あと、私として注目しているのは、大豆による代替肉で自給率を向上でき、さらに地産地消にも向いているという点だ。
花子: 大豆自体は自給率は高いんですか?
伊勢: 豆腐や納豆など食品用の大豆は品質への要求が高いため、国産品が好まれるけど、令和3年度の概算では需要が年間100万トン、国産の生産量が24万トンで、自給率は24%程度だね。
それ以外は油糧用大豆と呼ばれ、食用油を作り、その残りの大豆粕は家畜の飼料とされる。油糧用の大豆はアメリカなどから輸入され、250万トンほども使われるけど、その自給率はほぼゼロだね。食品用大豆と合計すると、大豆全体の自給率は7%に過ぎない。
花子: 食用だけでも自給率24%では、代替肉の生産にしても輸入大豆に頼らざるを得ないので、結局、自給率も上がらないのでは?
伊勢: そうだね。ただ、近年の気候変動などで、アメリカから輸入される大豆の価格も上昇しており、国産大豆との価格差が縮小しつつある。同時に、政府は令和2年の「食糧・農業・農村基本計画」で、令和12年の生産努力目標を34万トンとしており、それが実現したら食品用大豆の自給率も30パーセント台にはなる。[農水省]
花子: それでも、まだまだ低いですね。
伊勢: ここで代替肉用の食品用大豆の需要拡大が、大豆生産のゲームチェンジャーとなる可能性がある。食品用大豆の需要拡大と、輸入大豆との価格差縮小で、国産大豆の利益率が向上し、農家の増産意欲に火をつけるだろう。
現在でも、面積あたりの収量が50%以上増加する新品種の開発、ドローンやセンサーを活用した生育管理や除草ロボットによる効率的な除草作業などスマート農業の普及によって、収量が2倍以上に増加できた事例もある。
それに日本の水田の耕作放棄地は40万ヘクタールと、鳥取県全体に匹敵する空き地があり、それを大豆生産に適用できる。それだけでなく、大豆は適度な傾斜地なら、水はけが良くなって、かえって収量があがるので、今まで水田には使えなかった斜面も使える。さらに耕作は比較的簡単なので、小規模な家庭菜園や、都市の空き地を使った都市農園でも作れる。
こうした努力を総合すれば、令和12年目標の30パーセント台の3倍程度、つまり100%も射程に入ってくる。
花子: そうなれば有事の際に輸入が途絶えても、国内だけでなんとかなるので安心ですね。
伊勢: もう一つ、代替肉生産は比較的小さな設備で出来るので、消費地に近いところで分散型の供給ができる。菱熱工業という中企業が、小型自動車ほどのサイズの大豆ミートプロセッサーを開発している。これに粉末化した大豆を入れると、高温高圧で加工して様々な形状や味の大豆ミートを作れるという優れものだ。[菱熱]
実際に、山梨県の南アルプス国立公園の近くにあるレストランKomaでは、その設備を導入して、山梨県産の丸大豆100%を使った「フレッシュソイミート」をレストランや店頭、オンライン・ショッピングで販売している。大豆は、八ヶ岳山麓の水田の転作作物として栽培されている丸大豆で、信玄餅のきな粉に使われるなど、山梨県では昔から親しまれてきたという。[Koma]
このように大豆栽培から代替肉生産まで、一つの地域で一貫した地産地消の体制を作ることが食糧安全保障ともなるし、地域の活性化、地域文化の振興、人口分散などにも貢献するんだね。
花子: 八ヶ岳の山麓で、伝統的な信玄餅のきな粉にも使われた丸大豆から作られる代替肉なんて、聞いただけでもロマンチックですね。ぜひ行ってみたいです。
■7.「家庭から始まる安全保障」
花子: ただ、先生。代替肉はまだまだスーパーの売り場では、隅の方に置かれているだけですよね。
伊勢: そう、まだ、全体の肉需要の1%未満で、2020年には約346億円規模だった。2030年には800~1000億円と着実な成長が予測されているけど、それでもまだ数%の規模だけどね。
花子: そんなに日本の国土に適した食材なら、もっと早く拡大することは出来ないんですか? いったい、何が問題なんでしょう。
伊勢: それについては、代替肉のスタートアップ企業「ネクストミーツ株式会社」の代表取締役・佐々木英之氏がこう語っているね。
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代替肉が最も浸透しているのはアメリカで、代替肉のスタートアップだけでも200社はいると言われています。・・・日本では10社ほどの大企業が代替肉を提供していますが、スタートアップは私たちを含めほんの数社だけ。
―なぜ日本では代替肉のスタートアップが増えないのでしょうか。
商品を作るだけでなく、流通に乗せるのも大変です。たとえば大手の卸さんと取引しようと思ったら「口座開設に6ヶ月かかります」と言われて。仕方なく私たちはEC(JOG注: ネット販売)で売り始めました。大企業同士なら問題ないのでしょうが、私たちのようなスタートアップが6ヶ月も商品を売れなかったら潰れてしまいます。
・・・日本の商習慣が大企業を前提に作られているのを体感しましたね。スタートアップが商品を流通に乗せるには、そのような壁も超えなければなりません。[XTECH]
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伊勢: 品質や信頼性を重視する日本の市場では、商習慣も慎重なんだね。これは消費者の消費性向についても、同様なことが言えるのではないかな。「代替肉」という革新的な食材に面白がって飛びつく人はごくわずかだ。大半の家庭では周囲の家庭がよく買うようになって、その口コミを聞いて「じゃあ、ウチも」と重い腰をあげる。
花子: ウチの母親も、そういう感じですね。それをもっと加速する手立てはないのでしょうか?
伊勢: こういう新規の食材だと、消費者はなかなか飛びつかない、それで量が伸びないから、企業のコストダウンが進まない。コストが高いから、消費者が買わない、という停滞のサイクルからいかに抜け出すかが問題なんだ。
その停滞サイクルから抜け出す原動力が、消費者が多少高くても、「自分たちの食の安全保障のためには大事な食材なんだ」とよく理解して、積極的に購入することだね。量が出れば、コストダウンが進み、またスーパーでも売り場を増やして、成長軌道に乗る。そういう愛国心から消費活動をする「愛国的消費者」が鍵だと思う。
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JOG(1241) 家族農業で「食の安全保障」を
夫婦二人でサッカーグラウンド半分ほどしかない畑を耕し、年間600万円もの収入を得る「日本一小さい専業農家」。
https://note.com/jog_jp/n/n573df8841278
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花子: まさに「家庭から始まる安全保障」ですね。今日習ったことを母にもよく伝えて、代替肉をもっと買うようにして貰います。
伊勢: 代替肉が広まっても、松阪牛や近江牛など各地のブランドになっている美味しい通常肉はなくならないだろう。特に国産飼料を使っている畜産業者には頑張って欲しいね。それも「食の安全保障」の一環だから。
(文責 伊勢雅臣)
■リンク■
・テーマ・マガジン「食の安全保障」
日本の食糧自給率はカロリーベースで40%未満。中国の台湾侵攻、津波による港湾施設破壊、輸出国の気候変動や感染症流行などによる輸出停止など、多くのリスクを抱えています。
https://note.com/jog_jp/m/mb5e19e94ef1a
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
・Komaホームページ「Komaのフレッシュソイミート」
https://koma-hakushu.jp/product/
・XTECH「NEXT MEATSの体験」
https://xtech.mec.co.jp/articles/8281
・農林水産省「国産大豆の生産・需要をめぐる動向」、令和4年12月
https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/nousan/daizu/seminar/attach/pdf/221208-3.pdf
・菱熱工業「大豆ミートプロセッサー」
https://www.ryonetsu.com/products/food_industry/soy-meat.shtml
■伊勢雅臣より
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■編集後記
YouTubeで「国の宝を育てる授業」という有料サイトを開設すべく準備を進めています。有料といっても、教育者は月90円、支援者は290円という低額で、「国の宝=子供たち」を育てるための優れた授業を公開するものです。各地で様々な先生方が「国の宝」を育てるための授業に工夫を凝らしています。それらを広く公開して、役立てていただきたい、という趣旨です。ご期待下さい。
■講演会・勉強会情報
・「占領軍の言論統制と洗脳工作」展示会
DVD上映あり
4月13日(日)11:00~18:00
4月14日(月) 9:00~18:00
4月15日(火) 9:00~16:00
会場 文京シビックセンター 1階 展示室2アートサロン
入場費 無料
主催 新しい歴史教科書をつくる会東京支部 Tel 03-6912-0047
・「中朝事實」 勉強会
日時 4月14日(月)午後1時 ~
会場 かながわ県民センター 603会議室
内容 山鹿素行が著した歴史書『中朝事實』の勉強会 今回は、附録の「或疑(わくぎ)」を勉強します。
講師 佐藤健二氏(素行會代表)
参加費 1000円 テキスト準備の都合上、初参加の方は kingarmy00@ybb.ne.jp までお知らせください
・伊勢雅臣講演会
演題 「埼玉クルド人問題の陰に蠢く人権活動家と左傾メディア ~ 国民共同体をいかに守るか」
日 時:令和7年4月27日(日)
開場 13:40 開演 14:00~16:30(懇親会あり、伊勢雅臣も出席)
会場:シリウス 601 ※予約不要 小田急江ノ島線「大和」駅 徒歩5分
参加費 :一般 2,000 円、会員 1,000 円(学生 500 円) 会場でのお支払い
主催:大和正論の会 代表 佐々木辰雄
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