No.1422 なぜ、日本に世界超一流の「達人」が輩出するのか? ~ GHQ焚書『日本的人間』(復刻・現代語訳)を読む
なぜ、日本に野球、サッカー、卓球、音楽、料理など、世界超一流の「達人」が輩出するのか?
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■JOG(1224) 縄文人のこころ~日本人の「三つ子の魂」
人類学、宗教学など、様々なアプローチから明かされつつある縄文人の精神は、現代日本人の原型。
https://youtu.be/2aH3WWhXV9o
■JOG(151) 阿南惟幾 ~ 軍を失うも国を失わず
本土決戦を避け、全陸軍550万を終戦に導く責務は、一人の陸軍大臣の双肩にかかっていた。
https://youtu.be/v-FF1fcP3G0
■「国の宝を育てる授業」
1時間目 縄文人は日本人のご先祖様 ~ 縄文時代(1)
https://youtu.be/nG4Ncy3Ij-g
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■1.大リーグで活躍する多くの日本人選手
伊勢: 花子ちゃん、大リーグでの大谷翔平選手の活躍は凄いね。
花子: ええ、私たち女の子の仲間うちでは、普段は野球の話なんかしませんけど、大谷選手の話題になると、急に盛り上がります。同じ日本人が野球の本場の大リーグでも大人気だと思うと、とっても誇らしいです。
伊勢: 大谷選手だけじゃないよ。少し前は、イチロー選手が大活躍して、いくつもの大リーグ記録を打ち立てている。年間262安打を達成して、84年前の最多安打記録を更新したり、10年連続200安打以上は、大リーグ史上唯一の記録だしね。このメルマガでも、イチローを「求道者」として紹介してきた。
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JOG(616) 求道者イチローの原動力
前人未踏の道を行くイチローを駆り立てているものは何か。
https://note.com/jog_jp/n/n28fa531a7cd0
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花子: 大谷選手の新聞記事やテレビニュースで知ったんですけど、大リーグのあちこちの球団で、日本人選手が中心になって活躍しているんですね。
伊勢: 大谷のドジャースでは、山本由伸投手がエースピッチャーとして活躍しているし、佐々木朗希投手もまだ最初の年だけど、期待されている。シカゴ・カブスには、鈴木誠也外野手と今永昇太投手が、中心選手として活躍している。ベテランのダルビッシュ有投手もまだまだ頑張っているし、その他にも期待されている日本人選手が何人もいる。
■2.サッカー、卓球、音楽、料理でも
伊勢: 野球だけじゃないよ。サッカーでも、三笘薫、久保健英、伊藤洋輝、富安健洋、堂安律などが欧州の有力チームの主力として頑張っている。
花子: 女子の卓球でも現在日本人選手が世界のトップ10で、4人も入っていて、卓球好きの母がテレビを夢中で見ています。
伊勢: 日本人が国際舞台で活躍しているのは、スポーツだけではないね。クラシック音楽は長らく白人以外には理解できないだろうなどと言われていたけど、そんな迷信を小澤征爾が打ち破って、亡くなった時には、Newsweek誌で表紙を飾って、「半世紀にわたってクラシック音楽の世界を激変させた立役者」と評された。
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JOG(1359) 小澤征爾を育てた多くの人々の「無私の好意」
これらの人々の一人でも欠けていたら、「クラシック音楽の世界を激変させた立役者」は生まれなかったかもしれない。
https://note.com/jog_jp/n/n563d1bf234c5
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演奏家では盲目のピアニスト辻井伸行が欧米でも大人気だし、バイオリンの吉村陽鞠(ひまり)ちゃんは8歳でザルツブルグ音楽祭に最年少出演して以来、国内外の多くのコンクールで最年少優勝記録を更新し続けている。
料理では、ミシュランのガイドブックに載っているレストラン数では、東京は18年連続で、パリやロンドン、ニューヨークなどを抜いて、世界一を維持している。近年は、京都や大阪も2位のパリに続いて、3位、4位に入っているから、世界トップ5に、日本の3都市が入っている。
花子: 海外からの観光客が激増するわけですね。
伊勢: こうした人々は、野球でもサッカーでも卓球でも音楽でも料理でも、一つの芸に秀でた「達人」と言って良いと思う。そして、我が国には、なぜこんなに各界での達人が生まれるのか、その秘密を最近出た『日本的人間』という本に見つけたんだ。
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■GHQ焚書『日本的人間』(復刻・現代語訳)■
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■3.「わが軍に砲兵がいると、敵が決して砲門を開かない」
花子: それはどんな本なのですか?
伊勢: 本の帯には「これぞ、日本人の誇り高き生き方。」と題して、「心を揺さぶる184のエピソード」とある。我々の先人の心を揺さぶる短いエピドードがたくさん詰まった本だね。一つ、私の心に響いたエピソードを紹介しよう。先の大戦中の話だね。
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抜かずに殪(たお)す
山室宗武(そうぶ)陸軍中将は語る。
「今度の戦争で面白いのは、わが軍に砲兵がいると、敵が決して砲門を開かないことだ。射てば砲の所在がはっきりわかり、次の瞬間、必ず命中弾を受けねばならぬからだ。
剣聖といわれたほどの人が、剣を抜かずに敵を殪したと同様に、わが砲兵は、火力を用いずして敵を制圧しているのであるから、精神的にも技術的にも、究極のところまで到達していると称しても、決して過言ではあるまい。」[山中、p265]
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相手が大砲を撃てば、火と煙で位置が分かってしまうから、こちらの大砲はそこに照準を合わせて撃ち込む。百発百中の腕前で、相手は先に撃つのは自殺行為だと分かっているから、自分からは決して手出しをしないのだね。究極の抑止力と言える。山室中将は野戦砲兵学校長も務めていたから、砲兵たちが、どれほどの精神的技術的訓練を積んでいるか、よく知っていたのだろう。
花子: 現代のスポーツ選手たちが一心に技術を磨いているのと同じ生き方を、砲兵さんたちもしていたのですね。
■4.芭蕉「年来年来、読み捨てた句、そのたびに辞世でないものはない」
伊勢: その「一心に技術を磨く」という姿の究極がどんなものだったのか、もう一つ別のエピドードが示している。
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俳聖芭蕉が、臨終に辞世の句を、門人に求められると、粛然として言った。
「年来年来、読み捨てた句、そのたびに辞世でないものはない。」[山中、p233]
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花子: 松尾芭蕉の句はいくつか、国語の時間に習いました。私が一番、気に入ったのが、
閑(しずか)さや 岩にしみ入る 蝉の声
です。山の中で無数の蝉が「岩にしみ入る」ような声で鳴いている。逆に、その声しか聞こえない閑(しずか)さ、という情景がありありと浮かんできます。こういう一句一句を、芭蕉はそれぞれ辞世のつもりで、命を懸けて詠んだのですね。
伊勢: それが達人の芸を磨く道なんだろうね。たくさん句を作っていれば、そのうち上達するだろう、というような気持ちではなくて、一句一句、これが辞世になるかもという真剣勝負の気持ちで詠んでいく。そういう覚悟を持ってこそ、一歩一歩、句の境地が深まっていて、その中から何百年も後の我々の心に染み入る名句ができたのだろうね。
花子: 大谷選手のようなバッターだったら一球一球の打席練習、演奏家だったら一曲一曲の練習に真剣勝負で向かう、という姿勢ですね。
■5.侍が武を磨く理由
伊勢: もう一つ、達人の姿勢を示すエピソードがあったので、読んでおこう。
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本分
吉田大蔵(おおくら)は、弓術をもって加州侯(JOG注: 加賀藩主)に仕えていた。ある日、加州侯は、7、8名の大名を招いて饗宴を張った。
折しも数行の過雁(編注:空を飛んでいく雁)に、話が弾んで来ると、加州侯は、吉田に命じて空の雁を射させた。
「ハッ」と答えた吉田、しばらく心を鎮めていたが、サッと放す初矢、二矢、舞いつつ雁は落ちて来た。満座は喝采して、
「さすがは加州侯、よき家来を持たれる。」
と、ほめちぎった。
後刻、客が散じてから吉田は御前に伺候し、永の暇(いとま)を請うた。侯は驚き、しばらく考えていたが、名君である。
「私が誤っていた。以来断じてあのようなことはさせぬ。今回だけは思いとどまってくれ。」
と、深く謝して、吉田をとどめさせた。
すべて侍が武を磨き、仕を求めるのは、戦場に臨んで君のために尽くさんがためである。それを饗宴の慰めのために使われて、もし仕損じたら、自分は割腹、主君は恥辱を受けねばならぬ。
そんな慰めに武を使うのは、愚の骨頂である。
吉田は本分を忘れぬ男だった。
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伊勢: この話は、達人は何のために真剣に技を磨くのか、ということを示している。たとえば、吉田大蔵が、弓の名人として名を売りたかったら、7,8人の大名の前で、飛んでいる雁を仕留めた、というのは良い宣伝機会であって、そういう舞台を作ってくれた主君に感謝しただろう。
また、吉田が「永の暇(いとま)を請うた」というのは、本人の修練が金儲けのためでもなかったことを示している。金のために修練を積んでいたのなら、逆に見事な腕を見せたのだから、自分の石高を上げてくれ、と頼んだかもしれない。
花子: 名もお金も求めているのではない。余興のために自分の芸を使われてはたまらない。「すべて侍が武を磨き、仕を求めるのは、戦場に臨んで君のために尽くさんがためである」という一文が、心に迫ってきますね。
伊勢: 金や名誉を追求していたのでは、ある程度、名が売れたり、財産ができたら、このくらいでもういいや、と自己満足してしまう。それでは達人の域には達しないだろう。達人になるためには、自分の道を一途に歩んでいく必要がある。
■6.専門性と「数世代、数百年かけて伝えられる技術と伝統」
伊勢: 冒頭で、料理の世界では、ミシュランガイドの星つきレストランの数では、世界のトップ5に日本の3都市が入っているという話をしたけど、その理由の一つを、ミシュランガイドの社長ジャン・リュック・ナレ氏が、次のように語っている。
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日本料理はクオリティーも素晴らしい。シェフのレベルもどの都市よりも高く、何よりシェフ固有の技術がよく伝授されていた。数世代、数百年かけて伝えられる技術と伝統は追跡が難しい(JOG注:追いつくことが難しい、の意か)。
特に私が高く評価したのは専門性だ。パリの日本飲食店に行けば、寿司、刺身、焼き鳥などメニューがたくさんある。このため日本でもそうだと思っていたが、私が行った飲食店はほとんど寿司店、刺し身店、焼き鳥店、うどん店など専門店に細分化されていた。
非常に印象的だった。こうした特性から日本の飲食店の相当数は誰も追いつけない専門性を確保していた。当然、いい評価につながる。[竹田、p34]
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たとえば、京都の「大市」という店は、元禄年間から三百年以上にわたってすっぽん料理を作り続けてきた。鍋も何百年も使い込んでいるので、湯を沸かすだけでスッポンスープができるほどだと言う。これがナレ氏の言う「専門性」と「数世代、数百年かけて伝えられる技術と伝統」だね。
花子: うちの父も蕎麦屋をやっていますが、たとえばヨーロッパではスパゲッティだけやっているような専門店はないんですか?
伊勢: ヨーロッパには4年住んで、あちこち旅行もしたけど、そういう専門的なレストランは見たことがないね。ピザだけを出す店はあるけど、それはファーストフードの類いで、日本のように蕎麦だけで数世代も続けてきた老舗の名店というは見た記憶がない。
こういう専門性というのは、私が良く言う「一隅を照らす」ことだ。そして、数世代も続けるということは、一生をかけて一途に蕎麦作りに精進する努力が、親から子へ孫へと、何代も継承されていることだね。
花子: あれもこれもやらないで、自分は蕎麦一筋と決めて、それに一途に一生、打ち込んでいれば、一流の美味しい蕎麦ができるのも、ある意味、当然ですね。
伊勢: そう、そういう「一隅を一途に照らす」という生き方が、「日本的人間」の特長の一つだと思う。だからこそ、野球やサッカー、卓球、音楽、料理などの様々な分野で、世界超一流の「達人」がたくさん、現れているのだと思う。
■7.「一隅を一途に照らす」生き方が強い日本をつくる
伊勢: この本の著者・山中峯太郎氏は、この本をまとめた動機を、「序」で次のように語っている。
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日本人である我らは、今や日本的人間の真面目を見直し、新たなる自覚をいよいよ強化し、それによって現代より次代へ、日本的人間の精髄を伝えなければならない。
いわゆる「日本的人間」の性格、その本領は一体どこにあるのか。
この命題を事実によって、解明すべく企てたのが、この本を書いた動機である。[山中、p3]
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「日本的人間」の本領の一つが、以上述べたように「一隅を一途に照らす」生き方だとすれば、この生き方をより多くの日本人がすることで各分野で世界一流の達人が日本に続々と現れてくるだろう。スポーツや芸術だけでなく、会社での仕事や、家庭や学校での子育ても含めてね。そうなれば、日本はとんでもない国となる。
我が国は開国からわずか60余年で国際連盟の一員という世界の指導的大国に有色人種国家としてただ一つのし上がった世界史的奇跡を成し遂げた。その途方もないエネルギーを、アメリカの占領軍は恐れて、この本を焚書処分にしたんだ。花子ちゃんにも、こういう本を読んで、自分の一隅を一途に照らす生き方をして欲しいね。
花子: 分かりました。早速、読んでみます。
(文責 伊勢雅臣)
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■本稿で紹介したGHQ焚書『日本的人間』(復刻・現代語訳)■
日本人とは何か? 私たちはどう生きるか?
GHQが禁じた、戦前日本人の"生き方の教科書"が今、よみがえる。
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・山中峯太郎『日本的人間』[復刻版・現代語訳] (GHQ焚書書籍)★★★、ダイレクト出版、R07
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■伊勢雅臣より
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■編集後記
水戸に行く所用があって、その途上で、香取神宮、鹿島神宮を参拝してきました。神武天皇の御代に創建され、伊勢の神宮と並んで、日本三大神宮のうちの二つとされています。本殿などの建物も立派ですが、何よりも鬱蒼とした鎮守の森が、太古の昔を偲ばせてくれました。腰折れを一首。
御園生(みそのふ)の木立の太くいや高く聳(そび)え立つさま神さびて見ゆ
(鎮守の森の木立が太く、高く聳えている様は神々しい)
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